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【教職員アンケート結果】どう考える? 部活動の“必須加入”

  • メガホン編集部

現在、ほとんどの中学校および高等学校で実施されている部活動。スポーツ活動や文化活動などに取り組むきっかけとなるだけではなく、生徒の人格形成の場としても、これまで重要視されてきました。部活動が日本のスポーツや芸術文化等の振興を支えてきた側面もあります。

学校で行われる部活動は、学習指導要領で「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とされており、教育課程に含まれていないため、制度上“任意加入”となっています。また、平成30年にスポーツ庁と文化庁で策定されたガイドラインには、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との関連を図り、合理的でかつ効率的・効果的に取り組むこと」とされ、「部活動への参加を義務づけたり、活動を強制したりすることがないよう、留意すること」と明記されています。

しかし、部活動への参加が必須となっている学校もあり、その位置付けを問う動きが強まっています。今回は、教職員の立場から考える部活動のあり方についてお聞きしました。

参考:
運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン
文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、部活動の“必須加入”ついてアンケートを取りました。

WEBアンケートサイト「フキダシ」は、現在ユーザー登録を受け付けています。教員の方だけではなく、事務職員や用務員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、ICT支援員の方など、学校現場で働く様々な立場・職種の方が対象です。

■対象:全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年1月21日(金)〜2022年2月13日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数:69件

アンケート結果

設問1 あなたの学校、部活動は「必須加入」?

Q1. あなたの勤務校では部活動は「必須加入」となっていますか?

設問2・4 部活動の「必須加入」、どう思う?

Q2. 生徒を部活動に「必須加入」させることについて、あなたの意見を教えてください。

Q4. 部活動の「必須加入」について考えていることを、ご自身の経験からお書きください(賛成意見、反対意見、またはその両方でも構いません)

「賛成」「どちらかと言うと賛成」を回答した方の主な意見

どちらとも言えない。その他に打ち込めることが課外活動であれば良いと思う。【高等学校】

「反対」「どちらかと言うと反対」を回答した方の主な意見

必須加入には反対。部活動はあくまでも自主的な活動であるべきなのに、学校ごとに選択肢が限られているにも関わらず、必須にすると、自主性の担保ができず、”強制された”自主性でしかない。また、今の生徒は学校からの学習課題(宿題や予習)も多く、放課後および休日の学習塾・習い事を並行させている者も多いことを考えると、生徒自身に加入するか選択できるようにして余裕を持たせておくことは必要不可欠。【高等学校/高等専門学校】

今の時代、放課後にどのように過ごすかは個人の自由。確かに家でゲームをしてダラダラ過ごすのは良くないが、勉強時間が確保できたり、家族との時間が増えたり、全てがマイナスではない。「部活動をしない生徒は荒れる」は幻想で、日頃の生徒指導が機能していないだけだと思う。また、顧問を持つかどうかも任意にしてほしい。専門外の教員が主顧問の場合あり、やりたい教員が指導すればいい。【高等学校】

部活動に必須加入させることは反対です。部活動を担当すると必然的に勤務時間を大きく上回ってしまう状況の中で、子どもの必須加入をさせている学校は、教員の部活動の実情をどう捉えてるの?と聞きたいです。そもそも興味のある部活動がなくイヤイヤ入る子どもがでてきてしまうので、学校外で自分の好きなことをする時間を奪ってしまうことにつながると思います。【中学校】

部活動に必須加入となると、「結果的に入部したけれど参加していない」ということも発生する。その場合、子どもたち同士でお互いを監視するような作用も働きやすい。【中学校】

部活動はあくまで子どもたちの自主的活動の場所であるはずなので、強制的に参加させるのは主旨と異なるので反対です。子どもたちがやりたい!と思って取り組む集団と、仕方なく…という気持ちで取り組む集団、色々あるとは思うけれども、どちらの集団に対しても心の成長を促すために教員は一生懸命やっていると思う。そんな教員が疲弊しないよう、子どもたちの部活動の強制参加には反対。子どもも大人も前向きに頑張れるチームを作ることの方が大切だと思う。【中学校】

基本的に、“やらされたもの”“やらなければいけないもの”には学びが少ないと思っています。なので、必須は基本的に反対です。しかし、“学校の役割”を問い直した上でその方法が子どもにとって利益が多いならばそれでもいいと思います。私は、“学校とは子どもの自律・自立を促す場”だという認識なので、その役割ならば部活動の必須加入という手立ては違うのではないかと思います。【中学校】

反対。強制的にやらされる活動には、何の主体性もうまれない。今勤めている学校は小規模校なので、部活動が3つしかない。しかも「陸上競技部」「野球部」「女子バレーボール部」の3つだ。運動部しかない。選択肢が少ない中で、生徒たちは必ず1つを選んで入部しなければならない。運動が苦手な子どもたちは、つらい部活動生活の始まりである。自分の得意なもの、興味のあるものを選択できれば、意欲も向上し、技術も向上し、それが結果的に自信につながる。しかし、自分の不得意なもの、興味のないものに入らなければいけない生徒たちは、意欲が低下する一方である。やる気のない生徒たちの気持ちを考えると、顧問としてもつらい。【中学校】

反対です。1つの競技に生徒を縛りつけることのメリットがわかりません。一度入部した生徒を退部すれば、生徒のキャリア(調査書や履歴書)に傷がつくとの理由で留めておくことも納得できないことです。財源確保、教師の自己満足のために生徒を利用しているのだと私は考えています。【高等学校】

力の入れ具合によっては勉強と部活だけで学生生活が終わってしまう。若いうちに進路を決めないとつけない職業がたくさんあったり、勉強・部活以外にも学ぶべきことがたくさんある。学校以外で学ぶ機会を増やすためにも必須加入はやりすぎだと思う。【小学校】

部活動は教育課程外の活動なので、それを必須にして生徒の意思を無視した状態で行うのはおかしいと思います。放課後の時間は個人のものであり、自由選択で自分らしく生きられる時間として位置づけてあげたいです。また生徒を必須加入させることは、教師も必須担当(指導)せねばならぬ状況につながります。勤務時間内ももちろんですが、勤務終了後や土日のボランティア参加等、こちらも本人の意思に反して半強制的に行われます。必須加入かそうでないかに関わらず、この法外な働き方は大きな問題をはらんでいます。世界各国を見渡しても、かなり異質な教育活動。同質性を押し付け、それぞれが個性豊かに生きることへの不安を植え付けます。多様な生き方を尊重する意味でも、部活動は自由選択であるべきだと思います。(中学校勤務の夫の意見+自分の意見です)【小学校】

生徒が部活動に必須加入になるということは、教師も顧問を持つ圧力が高くなるのではないか。勤務していた中学校では部活動が必須でなかったが、それでも部活動の顧問は全員の教師が担当していた。(負担の軽重はもちろんあるが)教師の仕事の負担を減らしていく流れの中で、部活の「必須加入」はなくても良い。部活動の加入が必須でないことでの困りごとは、働いている中では感じなかった。【特別支援学校】

必須加入には反対です。部活動は生徒の趣味なので、もし必須加入にするならば、生徒が入りたい部活動をすべて立ち上げなければなりません。しかし、教師の数からして、それは無理です。だとすると、必須加入の意味はないと考えます。【中学校】

部活動はいらない。というか、教育課程にないものを教育現場に入れて、教員の負担を大きくすることは大きな間違い。子どもたちの立場になって考えたら意味のあるものかもしれないが、何も学校でやらなくても良い。【小学校】

・荒れた時代を部活で立て直した経験をしているので部活には大きな教育的な意義があることが体に染みついている。しかし部活中心の学校にして問題行動は減ったものの、不登校生徒が増えてきた実情もある。それは管理体制の中で生きるのがつらくなった生徒の意思表示だったのではと今になると思える。
・部活の地域移行には総論は賛成である。しかし当地は田舎なので合同部活動をするにも遠くまでの移動が必要で、保護者負担の面で課題がある。行政が経済的な面も含めてバックアップをする確約がないとなかなか進まないのではと思う。一つ一つの課題をどうクリアするか、地方自治体ごとに市教委だけでなく首長部局も含めてのプロジェクトチームを作って進んでいくことが必要だ。【中学校】

そもそも部活動を学校の中に置くべきではない。また部活動は本来楽しむ、親しむためであるので、大会やコンクールで競わせるのは違うと思う。楽しむ、親しむが勝つためと目的が変わってしまうため。【中学校】

私が生徒だった頃は、中学時代の場合は必須だった。実質パソコン部や卓球部に幽霊部員が集まっており、席だけ確保されている様子だった。高校時代も1年生は必須だったが、こちらも幽霊部員も一部の部活動に集まっていた。教師となった今は、必須ではなくなったものの、やはり部活動に入っていたこと、続けていたことが受験において必要だと思っている生徒や保護者が多い。籍だけ置いていても結局は部活に本気で取り組む中で、何を見つけ出したかが大事なのだから、幽霊やるくらいならクラブチームを全力で頑張ってほしい。お金をかけて道具を用意する必要のある部活動ならなおさらである。【中学校】

勤務校では、「部活動に代わる活動(クラブチーム、習い事など)がある場合は入らなくていい」としています。これまでの経験上、外部の活動が忙しい生徒、ヤングケアラーや貧困家庭の生徒は入りたい部活ではなくお金や時間がかからない部活に入っていました。別にやりたくないけど、内申書のためにとりあえず所属しているという生徒も少なくありません。「必須加入」の問題より、部活動の成績を加点する高校入試の仕組みにメスを入れることも重要だと思います。【中学校】

強制加入はすぐに国がやめさせるべき。また、強制加入ではなくても、おかしい点は多くある。例えば本校では、年度途中で退部した生徒については、たとえ途中まで一生懸命に活動していたとしても、指導要録に記入しないのが当たり前だと考える教員が多い。また、生徒会長選挙に立候補した生徒のプロフィールに、わざわざ部活入部の有無を書く欄がある。部活動=崇高なもの、帰宅部=劣った生徒、という考え方を示すこのような例はたくさんあると考えられる。これは、あきらかに現代社会や国際社会のコモンセンスにそぐわないものであり、恥ずべき点であると思う。【高等学校】

「どちらとも言えない」を回答した方の主な意見

生徒にとっては教育的効果があるので良いとは思いますが、ミスマッチなど部活動を辞める生徒もいるため、全生徒の参加は果たして良いのか分かりません。また、顧問は未経験者がその部活動担当になることも多く、週末や放課後など時間外労働となるため、指導員やスポーツクラブなど外部機関への移行や協力が望ましいと思います。【高等学校】

前任校では、全員加入の時期があり、私はそれを促進していました。理由は、出会うきっかけ作りです。自分から部活動をやりたい、あの部に行ってみたいと行動できる生徒はいいのですが、そうじゃなく一歩踏み出せない生徒には、「行かされている」という口実にして、部活動というコミュニティに参加してほしいと考えていたからです。別にやめてもいいし、部活動を変えてもいいけど、一度覗いてみるという体験だけでもしてほしくて、全員加入としていました。部活動で培うものが進路実現に向いていたり、社会で評価されやすいことが部活動を後押ししているのだと思います。部活動を続けていただけで、大学入試でも加点される仕組みがあります。【高等学校】

設問3 「必須加入」の学校があるのはなぜ?

Q. 部活動が「必須加入」となっている学校があるのはなぜだと思いますか?

生活指導に繋がると考えられているため

部活動をしていないと外で悪さをすると考えられていたり、部活動に加入させることで普段の学校生活にも様々な指導を及ばせやすくなるから。勤務校でも授業態度が悪いと◯◯部の顧問に言うからな!と圧をかける先生が多い…。【中学校】

勤務校では、1年生は必須加入である。問題がある生徒に対し「アイツ、何部だ!」や「○○部なのに、だらしない!」という教員がいる。部活動=生徒指導という考えが根強いからではないか。【高等学校】

学校、地域、家庭等社会全体の「教育力」が落ちているため、生徒指導を部活動に頼らざるを得ない学校が多いことによると思います。本当はルール等を見直すなど、対処法は様々ありますが、時間や労力が必要なので、後回しにされ続けている結果なのではないでしょうか。【高等学校】

部活動の生徒を「使って」行事を遂行したり、よく言うことを聞き、よく動ける生徒として活用されている側面もあります。確かに、すごく助かりますが、当たり前のように生徒を「使う」教員もいてもやもやします。【高等学校】

放課後の一定の時間を生徒の好きにさせたくないと言う考えがあったんでしょうか。自分の勤務先は外部のクラブチームや習い事等による無所属は一応許可されていますが、学校によってはそれもない所があるようです。【中学校】

今までこうだからという慣習。そこの根っこには、生徒指導上困難な生徒が多い場合の”部活でひっぱる”文化も埋まっていそうです。大前提として、授業・勉強は苦しくて逃げたいもの⇔それ以外のところ(行事・部活)で発散するという感覚は今でも根強いと実感しています。つまり、「授業で生徒を育て、伸ばすという感覚がない」ことがこの文化の正体なのではないでしょうか?【中学校】

教育的意義があると考えられているため

学校という組織における「共同の時間」を確保して教育課程のみでは達成し難い「より深い連帯感」を築くため(?)、あるいは課外活動ながら何かに集中的に取り組んでみる経験を提供し、学校生活の価値を向上するため(?)、または単なる慣習。【高等学校】

生徒のやってみたい!を実現するため。生徒の挑戦意欲を拾うことができるかもしれないから。【高等学校】

生徒が所属するコミュニティを増やし、交友関係の輪を広げるのに一役かっている。【高等学校】

部活動に入ること、部活動をがんばって3年間続けることがよいことだとする考え方が強いのだと思います。【中学校】

何の根拠もありませんが、経験上、”部活動こそ生徒が伸びる”という教育観が大きい気がします。【中学校】

過去の慣習が残っているため

昔の名残でやめられないだけに見えます。【中学校】

今までそうしてきたからではないでしょうか?理由はないと思います。もし、部活動に入っていないと生徒指導ができないというのであれば、大人の都合を子ども押し付けているだけかと思います。【中学校】

部活動を維持するため

小規模校で全員加入にしないと競技が成り立たない。【高等学校】

生徒数の減少で部活動の数を維持できなくなっているからでしょうか。【中学校】

私の出身中学校は全員加入だったが、全校生徒の人数が少なかったことが挙げられる。学校単位のチームという枠組みでは、部活動を維持するために、全員加入という方法をとらないと持続できない学校もあるのだと思う。【高等学校】

卒業後の進路に影響するため

受験時に部活動で頑張ったことを聞かれたり、資格や成績によっては推薦の条件にあてはまることがあるから。【中学校】

進学就職調査書に書く内容がないからかと思います。他の長所を見取れれば良いのですが、コミュニケーションを取る時間や、コーチングのようなことを学ぶための教師の自己研鑽時間がたりないためだと思います。【高等学校】

保護者からの要望があるため

保護者の要望が強いため(家でゲームをされるより、学校で活動をしてもらった方がいい、内申書のため)。【中学校】

まとめ

 実質的に必須加入となっている場合を含めると、小学校の30.0%、中学校の18.9%、高等学校の36.0%が部活動の加入が必須となっていることがわかりました。個人の意見を聞くと、9割以上が部活動の必須加入については、「反対」もしくは「どちらかとう言うと反対」と回答。

「部活動は生徒の自主的な活動のはずなので、強制的に参加させるのは主旨と異なる」「教育課程にはない課外活動の一環である以上、強制するものではない」など、本来の部活動の位置付けとの矛盾を指摘する声が多くあがっていました。

また、児童生徒の人権や、教育的な視点における意見も目立ちました。部活動での取り組みが高校入試や卒業後の進路につながる仕組みになっていることを問題視する声も。受験や進学への影響を考えて、部活動を辞めることを躊躇(ちゅうちょ)するケースもあるようです。

2022年3月には、高校生や大学生などでつくる「日本若者協議会」が部活動への強制加入の撤廃を求めてスポーツ庁に要望書を提出しました。現在も、賛同者を集める活動を続けています

部活動をどのように位置付け、どのように運営していくのか。児童生徒の教育的意義や人権、学校における働き方改革の視点も含めて、議論が進んでいくことを期待します。



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NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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