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【教職員アンケート結果】これで困ってる…!「一人一台端末」のトラブル・課題

  • メガホン編集部

文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」により、2021年7月時点で全国の公立小中学校の9割以上で1人1台のパソコンやタブレット端末の活用が始まりました。高等学校においては、約2割の学校で配布が完了しています。
※GIGAは、「Global and Innovation Gateway for All」の略称

端末の導入により学び方の広がりが期待される一方で、「通信環境が整っていない」「児童生徒への指導が難しい」など、活用の難しさを訴える声もあります。学校現場では、具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。

1人1台端末の利活用動向、44%の自治体「通信環境に課題」 | 教育業界ニュース「ReseEd(リシード)」
端末利活用状況等の実態調査 (令和3年7月末時点) 文部科学省より

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、1人1台端末のトラブル・課題についてアンケートを取りました。

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2021年10月30日(土)〜11月21日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :51件

アンケート結果

Q. 現在各自治体において、コロナ禍を契機に「1人1台端末」環境の整備が前倒しで進んでいます。新しい取り組みにはトラブルや課題もつきものです。あなたの職場で起こっているトラブルや、現在見えてきている課題を教えてください。

※全回答の中から抜粋して掲載しています。

児童生徒への指導に難しさがある

情報リテラシーに関する教育が追い付かないです。また、便利であるがゆえに、重要な情報の漏洩が起こるのではと心配です。【小学校】

授業中子どもが勝手に、別タブ開いて、サイトを見ている。持ち帰りを毎日行っているが、充電忘れやそもそももってくるのを忘れ、いざというとき使えない子がいて、対応をいちいち変えないといけない。【小学校】

子どもたちが機械に操られてるような感覚があります。刺激的で中毒性が強く、さわっている間に声をかけても耳に入ってないか、空返事。いつも「目の前の気持ちや心がある人間よりも機械を優先させてるって怖くない?」という話をします。家庭でも、特に低、中学年の子たちは宿題や家族とのコミュニケーションそっちのけで、動画を見たり、タイピング練習をしたりで、取り上げると泣き叫んで手に負えないと言う話も保護者からあがっています。また、授業で使うときにも、教師や友だちの話を聴かなければいけないタイミングでつい端末を触ってしまう、気がついたらいじっているということがよくあります。せっかくの便利なツールですし、これからの社会では切っても切り離せないものだと思うので、ルールでがんじがらめにしたくはないのですが、なかなか自制できない子どもたちの姿を見ると、どうしたものかと日々考えさせられます。【小学校】

生徒によって基礎知識に隔たりがあります。すでに知っている生徒と、何もかもわからない生徒が混在しており、指導が難しいです。【中学校】

iPadの使い方。教育関係のアプリを取れるようにしているが、生徒たちはゲーム感覚でできるものを常にやっている。学校での生のコミュニケーションが減っていく怖れを感じている。また、アプリに夢中で、切り替えが出来ず、授業やその他の活動に支障が出ている。【中学校】

端末の充電。私自身はまだ授業で使用できていないが、先行して積極的に導入している教員から、先日担任に向けて「生徒に自宅または空いている時間に充電しておくようにご指導ください」というお願いがあった。今後、さらに授業で導入されることが増えると、より頻繁にこのようなことが起こると予想される。端末の充電のない生徒にとっては授業の進行が止まるし、充電するように呼びかける担任の負担もあるし、教室で充電するとしてもコンセントが足りない。携帯の充電のように充電することに対して生徒自身が習慣化できれば、ある程度は解決できると思うが、突発的な充電トラブルは今後も頻発すると思う。【高等学校】

教職員間での知識・技術・考え方のギャップ

・一人一台端末について管理職があまり理解しておらず、やりたいことを説明しても「少しでも問題が起きそうならやめといた方がいい。」「やりたいことがあるなら学校全体で揃えてやらないと。」のような感じであしらわれ、全く進む気配がない。
・年度当初に大した準備もできないまま急ピッチで端末が配られた。教育委員会や管理職からは、「このように使っていきましょう。」等の活用方法の指導はなく、ほぼ教諭に丸投げのような状態。しかし、何か新しいことをやろうとすると、「それはやめといた方がいいよ。」と否定してくることが多い。
・他の先生がどんな感じで端末を使っているのか、共有する機会がない。個人的に聞くことはあるが、新しい発見などはあまりない(どちらかというと自分から発信していることの方が多い)。【小学校】

1人1台端末が導入されて、今までに学校の中で起こらなかったトラブルが起こっています。例えば授業中にタブレットで関係のないことをしたり、性的な画像を見たり、ゲームをしたり、といったことが挙げられます。しかし、そのようなトラブルが課題というよりも、そういったトラブルへの対応の仕方に課題があると感じています。例えば勤務校では、トラブルが起こる度に禁止事項が増えていっています。教職員としては、トラブルが起こっては困るから、禁止事項を増やすのでしょうが、しかしそれだとその行為がなぜダメなのを考える機会が失われてしまいます。とは言え、禁止事項で対応する教職員の方々は、トラブルが起こってはいけないという気持ちで禁止事項を増やしているのだと思います。このバランスが非常に難しいと感じています。【小学校】

教師の研修体制やその時間の確保が不十分。力量の差。【中学校】

教員のスキル不足で、授業でタブレットを使っている教科はほんの少しである。【中学校】

教員の方が端末を使いこなせない。生徒の方が上手に使い、遊び道具としての使い方を見つける。それを教員が見て、それなら使うの禁止だ!となってしまう。本来は問題が見えてきた際に、どう使うべきかを指導するべきだとか、マナーモラル等の指導をすべきだと思う。自分達が分からないために使用禁止にしてしまえば取り組みが無駄に終わるだけでなく、学校だけ時代遅れのようになってしまう。【中学校】

教員のICTスキルに差があり、スキルが乏しい教員にとっては負担である。【高等学校】

高校ですが10月中旬に生徒に1人一台Chromebookが「貸し出し」されました。うちの職場でまず話題になったのは、生徒用の端末はYouTube、Google Earth、Googleマップが実は見れないこと。(一方でニコニコ動画は見ることができるらしい)
府の方からデフォルトで規制をかけたらしく学校から要望があれば規制解除はできるらしい。私個人としてはYouTubeを使用して授業をすることもあるし、関連する動画を生徒が見つけてくることも期待している(勿論、著作権や人権侵害にあたる動画も溢れていることは承知している)。しかし、本校の多くの教員は「規制を解除すると休み時間に学校の端末や回線でYouTubeを見て過ごす生徒が増える」「そもそも解除の必要性があるのか」などと最初から規制をかける反対意見が多く運営会議でも解除する意見は私含めてごく少数だった。解除もスグにできるらしいということから、規制はかけたままになってしまった。一斉休業に入った後では遅いと思うのだけれど。他の自治体はこのように規制をかけているのか知りたいです。【高等学校】

教員の業務に偏りがある

職員の中では「端末利用の推進」「端末の管理」「そもそもの操作方法」等を一部の人間がまとめて担っている。【小学校】

担任をしている教員がICT担当をしているため、非常に多忙。負担が偏っている。市内にはタブレット配付後の人員加配が1人も無い。各校が今いる人員だけでやりくりしている為、ICTに詳しい教員がいない学校は四苦八苦している。配るだけ配って、最初の説明会だけで「後は自分達だけでなんとかしろ」といった扱い。国はもちろん県や市も何も対策を取ってくれない。【小学校】

情報担当の先生への負担が大きすぎる。現在ICT関連の委員会を設定して各学年から課題を吸い上げられるよう急遽組織化したが、主担への負担軽減にはなっておらず難しい面がある。また外部職員の方が来てくれるのはありがたいが、やはり普段子ども達に授業をしている訳では無く、時間割の都合などもあって小学校では授業に入り込んでサポートしてもらうということが難しい。【小学校】

端末管理のために教員の負担が増える(例えば、端末のセットアップやネットワークへの接続など)。そうかといって新たに分掌が増設されるようなことは聞こえてこず、これまでの業務に加えてさらにICT業務が増えることになる。専門の職員を配置すべきではないか。【高等学校】

県立学校では1人1台に対する「予算」がないため、学校に専用回線を引き、個人所有ののスマホやタブレットを利用するBYODを導入した。接続認証に伴う設定作業は授業等も普通に担当する教員。県から操作マニュアル等は送付されているが、なかなか一筋縄でいかない場合も多く、その対応に追われることも多い。【高等学校】

通信環境が整っていない

WiFiの速度が遅く、クラス全員でインターネットを使用すると、何人かは繋がりません。1人1台のはずなのに、全員が使えません。【小学校】

勤務校では2学期より端末の持ち帰りが始まり、家庭学習をタブレットで出しているのですが、10月より学校ではつながるのに家庭ではつながらない案件が頻出しており、個別対応に奔走させられています。【小学校】

・Wi-Fi環境が整っていないためフリーズする端末がある。
・端末が上手く作動しないことを想定して準備する必要があり、手間がかかることもある。【中学校】

ネットワークの回線が重たく、有効なコンテンツやソフトを使おうと思ってもクラスで全員が開くと数名は使えない状態が発生する。【中学校】

タブレットは300台ほどあるが、40〜50台ネットワークにつなぐと、ほとんど回線がパンク状態である。【高等学校】

端末への規制やフィルタリングにより、できることが限られている

セキュリティがかかって、自治体も想定外なトラブルが起きている。例えば、なぜかアプリをインストールできない。OSアップデートができないなど。端末破損のトラブルも生じている。弁償は学校判断で行うとか、そんな基準おかしくないですか。全市同一基準でやらないと、毎回、判断に時間が取られて困る。【小学校】

使用するアプリについて、有料の物は市として導入することは無いと回答されました。ロイロノートや、ドリル教材等、他の自治体では導入されている物もある中、なぜうちの自治体は…と思ってしまいます。【小学校】

勤務市ではiPadを導入しています。しかし,市の管理するアプリのアップデートにより不必要なフィルターがかけられ,iPad最大の特徴の一つであるairdropが使用できなくなったり,ゲーム感覚で学べるホームページが軒並みブロックされたりしました。また,keynoteなどのAppleのアプリにはログインできず,市で契約しているschooltakt以外での操作がしづらくなっており,通信環境にないときの活用が難しくなっています。【小学校】

配布されたタブレットは規制が強く、youtubeなどが視聴できない。結局、教員用で再生して、黒板に映写してみんなで見ることになってしまう。【高等学校】

家庭や児童生徒への負担がある

学校に充電設備がなく、子どもたちは毎日登下校の際持ち歩いている。小さい子にとっては重たさが負担になるし、全てのクラスが毎日端末を使っているというわけでは無いような気がする。【小学校】

生徒が自身で端末を購入することになるため生徒への金銭的負担が大きい。ちなみに、本校では約7万円の予定。【高等学校】

経済的負担が大きい。特に定時制、通信制高校では困窮家庭の生徒が多く、高額なタブレットを購入させるのは難しい。【高等学校】

タブレットは各自で充電してくることになっているため、ほぼ毎日持ち帰らすことになるが、教科書や弁当を含むと生徒の荷物は重くなる一方になっている。またどの授業で使うかわからないので、ちゃんと持ってこない生徒も少なからずいて、使いたい時に使えない。毎日どの授業でも活用するとするなら、毎日持って帰らせ、充電させ、持ってこさせ、移動教室の時も持参させることを徹底しないといけない。教科書もすべて電子化されると荷物も減るが、今はただタブレットが荷物になっている感が強い。【高等学校】

端末が不足している

児童の端末は整備されましたが、教員用は数が足りません。児童が落として画面が割れてしまったものを、教員用として使うことを教育委員会から指示されました。【小学校】

・学校から端末を貸与しているが、故障した際の予備機がなく、その児童の端末がない状態になっている。また、メーカー側での修理にも非常に時間がかかり、戻ってくるのに二ヶ月はかかっている。
・自治体から予算をつけてもらえないので、教員が一人一台端末を持っていない。そのため、校務で使うこともできず、活用したくてもできない。
・Wi-Fiモデルしか確保されなかったため、家庭に持ち帰っても使えない家庭がある。また、ルータの貸し出しも遅れている上に数が少なすぎて運用できそうにない。
・とにかく、自治体からお金がないからどうにもならないと言われることが多すぎる。道具すら揃わないのにどうやって進めろというのでしょうか…。【小学校】

教員用のPCがない。生徒はタブレット配付。教員も同じタブレットは配られているが、「教員一人一台のPC」はない(予算の問題)。職員室には2~3台の共有PCはあるが、それでは仕事にならないので、みなポケットマネーでPCを買って仕事をせざるを得ない。【中学校/高等学校】

まとめ

1人1台端末のトラブルや課題として最も多くあげられていたのが、「トラブルへの対応や指導の難しさ」でした。夢中になれるようなコンテンツが揃っているからこそ、目の前の人とのコミュニケーションが疎かになってしまったり、不必要なサイトやアプリを開いてしまうケースがあるようです。

それに対して、「(ICT機器は)これからの社会では切っても切り離せないもの。ルールでがんじがらめにしたくはない」という考えを持ちつつ、「なかなか自制できない子どもたちの姿を見ると、どうしたものかと日々考えさせられる」「禁止事項を増やすだけだと、その行為がなぜダメなのを考える機会が失われてしまう」などの葛藤があることも伺えました。

端末への規制がかかっていることで、YouTubeの視聴やアプリのダウンロードができない学校もあります。生徒個人での動画視聴ができないため、「結局、教員用の端末で再生して、黒板に映写してみんなで見ることになる」という現状もあるようです。

その他、教員間での業務の偏りや通信環境の不備、家庭や児童生徒への負担など、さまざまな意見が集まりました。児童生徒の現状を踏まえた上で、これからの時代に合った学びについて、それぞれの学校で議論が進んでいくことを願います。



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NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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