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全国の小中学校の指導要録や通知表に記載される、「行動の記録」。

文部科学省が下記の通りに定めた10の評価項目について、児童生徒が「各項目ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合」に「◯」を付ける、とされています。

引用:行動の記録の評価項目及びその趣旨(文部科学省)
   児童生徒の学習評価の在り方について(報告)(文部科学省)

評価にまつわる大きな関心事の一つとして、入試への影響度が挙げられますが、「行動の記録」が審議の対象となることを明文化している学校も存在します。

例えば千葉県では、
「〇が1つもない場合は、審議の対象とする。」
「〇が2つ以下の場合は、審議の対象とする。」
といった文言が、公立学校の一般入学者選抜に関する資料に記載されています。

参考:令和7年度 一般入学者選抜の選抜・評価方法(千葉県立千葉北高等学校 ) 

通知表に記載されることも多く、入試にも影響する「行動の記録」ですが、「児童生徒の行動内容と項目の関連が明確でない」「各学校により運用ルールが異なっている」といった疑問の声もあがっています。

そういった「行動の記録」の評価の実態について、全国の先生方に聞いてみました。

※「行動の記録」ではなく、文章で記す「総合所見」についての意見であると思われる回答については、本記事では掲載を割愛しました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年9月27日(金)〜2024年11月5日(火)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :54件

アンケート結果

設問1 「行動の記録」で明快な評価ができている?

Q1.「基本的な生活習慣」「自主・自律」「創意工夫」といった内容に関して児童・生徒を評価し指導要録に記載する「行動の記録」について、現状として明快な評価ができていると思いますか?

「行動の記録」に関して「明快な評価ができている」と答えたのは、回答者54名中2名のみ、全体の4%でした。

その他の回答者は「明快な評価ができていない」と答え、その状況について様々な報告や意見が寄せられました。

「明快な評価ができている」と回答した方の主な意見

完全とはいえないが基準を設けて評価している【小学校・副校長】

「明快な評価ができていない」と回答した方の主な意見

客観的な評価は難しい

主観的にしか評価できないため。【小学校・教員】

そもそも人によって判断基準が違うから。また、◯をつけたくても、数の制限があるから。【小学校・教員】

項目が細かすぎる割には評価の基準が個人にとても左右されるため、必要性を感じない。【小学校・教員】

評価の妥当性に疑問あり

クラスの中での相対的な評価になってしまっていると思うから。つまりクラス替えをすると評価が変わる可能性が高いと思う。【小学校・教員】

生徒の個別の活動について、教員に見えていたり、教員が知っていたりすることのみ評価ができ、見えていない部分は評価できない。【中学校・教員】

学んでいるのは「児童・生徒」なのだが、教員による教員のための評価ではないか。教員からみた良い子と、教員が教員の目指す行動を指導した子の評価が高くなっている。【事務職員・小学校】

その他、疑問や限界を感じる

行動の記録の文言が、具体的にどういう行動を指しているのかが分からない。【小学校・教員】

指導要録の項目では何をもってどのように評価しているのかが見えないが、要録をつけることは義務なので仕方ないと思っている。【小学校・教員】

数値化も難しく、一元的な評価ではその児童生徒の本質を見抜くことは難しいと考えています。【中学校・教員】

設問2 「行動の記録」の評価に運用ルールはある?

Q2. 「行動の記録」の評価にあたって、「◯をつける数は1人4~6個」というような運用ルールが学校等で定められていますか?

「定められている」「定められていない」の回答がちょうど同数の結果となりました。

校種別の傾向として、小学校で「運用ルールが定められている」が47%だったのに対し、中学校では「運用ルールが定められている」が73%となり、小学校より厳密にルールを定めている状況が伺えました。

設問2-2 運用ルールの詳細は?

Q2-2. 運用ルールの詳細を教えてください。(100字以内)(任意)

「運用ルールが定められている」の回答より
小学校

・学級全体の◯の数を集計し、学年内で多すぎる/少なすぎる学級がないか確認し、大体同じ数になるように調整することになっています。
・△はつけてはいけないことになっています。【小学校・教員】

原則どの児童にも◯(評価される点)も△(今後の課題とされる点)も1つ以上ある、△の数が◯の数を超えないように(成績表は児童のがんばりをみとめ、今後の意欲を引き出すためのものだから)【小学校・教員】

管理職によっては、最低限どの項目にも1人は◯をつけるように言われる方がいる。また、同じ項目に偏りすぎていると、「他にないのか」と言われたこともある。【小学校・教員】

1学期は3つまで。2学期は4つまで。3学期は5つまで。と決まっています。増えていく方が嬉しい気持ちになるから、だそうです。【小学校・教員】

中学校

だいたい1学期は何個程度、2学期3学期と少しずつ増やしていく、という暗黙の了解がある。よほどのことがない限り、○の数が横並びになるようにしている。【中学校・教員】

ひとつもつかない生徒がいないように。【中学校・教員】

最低◯を1つ多くても5つまで【中学校・教員】

中1で最大3つ、通常1つ
中2で最大4つ、通常2つ
中3で最大5つ、通常3つ を原則に運用ルールを定めている。【中学校・教員】

進級とともに◯の数は特別なことがない限り増やす方向ですが学校ごとに運用は違うと感じます。「生命尊重自然愛護」は評価できるような教育活動を学校として設定しづらいと感じています。【中学校・教員】

「運用ルールが定められていない」の回答より
小学校

明文化されてはいないが、口頭ではアドバイスされる。【小学校・教員】

ルールは定められていないが、若手の頃に際立った1つか多くて2つと教えられたことがある。【小学校・教員】

運用ルールは明示されていないが、学年内でいくつくらいか、というような話はしている。ただし、それで上限が決められるわけでもなく、なんとなく自分が他の学級に合わせてきたように思う。【小学校・教員】

運用ルールとまではいかないが、「○はひとつはつけましょう」とか「多くても6つぐらいにしましょう」とか、確認しあっている。【小学校・教員】

設問3 「行動の記録」について、どう思う?

Q3. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。(100字以内)(任意)

「行動の記録」は不要

行動の記録は、誰が得をするのか分からない。マイナスなことを伝えるツールとしては機能していたかもしれないが、今は三角はつけないので、役割は終えたのではないだろうか。【小学校/中学校・教員】

通知票は必ず作成しなければならないものではない。中学校では内申書作成のための評価結果を、本人と保護者にサービスとして公表しているにすぎない。行動の記録も、そのサービスの一環なのだろう。不要である。【中学校・教員】

行動の記録は前年度の内容を参考にせざるを得ないですし、◯の数に対して指導が入るのもおかしいと思います。また我が子の通知表の記載を見ても一面しか見えません。不要です。【小学校・教員】

行動の記録で◯をつけたことを所見に書くよう指示されることも少なくない。であれば所見に書くだけで十分なので、行動の記録は必要ない。【小学校・教員】

不平等であるし、明快な基準も定められないので、行動の記録は不要。【中学校・教員】

理想を求めすぎて、現状何のためにやっているのか分からない制度となっている代表的な例。【高等学校・教員】

評価の仕方の見直しが必要

多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる状況は続いている。評価の在り方、必要性等を見直していく時だと思う。【小学校・校長】

指導要録の書き方、内容も見直す必要があると思う。作成が学年末になることがほとんどで、異動と重なれば大変になる。書き方も地域や学校によってバラバラで困る。【小学校・教員】

指導要録の項目の見直しや、通知票のあり方はセットで考える必要があります。また3学期制と2学期制のあり方も同時議論が必要不可欠です。【中学校・教員】

行動の評価は本当に必要なのかを今一度問い直して欲しい。内申点で進学できる実情があるが、不登校児童の評価など納得できない点が非常に多いと感じる。【小学校・事務職員】

子どもたちをおとなが思ういい子にあてはめようとするような記録はいらないかと思います。子どもたちに伝えたいことは、自分の声で直接伝えればいいかと思います。保護者の協力がいるときは、保護者に直接でいいかと【小学校・教員】

その他の意見

要録作成が、年度末の事務処理でもかなり大変で、なくなってほしいなと思います。【小学校・教員】

(勤務校は◯と△で評価する形式)支援を必要とする児童をはじめ、特に△をつけることに疑問あり。適切な支援がされないまま「不適切な問題行動」とされているケースも。問題行動ほど単純化できない。【小学校・教員】

「生命尊重自然愛護」でモヤモヤ。例えば花の水やりを忘れずにしていたら該当するか?どちらかといえば活動に責任があり「責任感」「勤労奉仕」につけている。評価は担任の主観が大きくなることも否めないと思う。【中学校・教員】

指導要録は在籍の記録だけでいいと思う。【小学校・教員】

まとめ

そもそもの「行動の記録」は、文科省資料に「十分満足できる状況にあると判断される場合」と書かれているように、絶対評価として○を付けることが念頭に置かれていますが、実際の運用にあたっては「クラスの中での相対的な評価になってしまっていると思う」といった声や、「最低でも1つ」「進級とともに○の数を増やす」といったルールを設けているという声があがるなど、絶対評価としての運用に難しさがあることが伺えました。

そのような評価の難しさの解消に向けて、いくつかの自治体では「行動の記録」における「十分満足できる」状況や、校種・学年ごとの評価表を例示しています。地域内や学校内で評価方法や基準を揃える際には、このような資料を参考にするのもよいかもしれません。

参考:
学習評価及び指導要録の 改善等に関する指導資料(愛媛県教育委員会)
「学校に求められるこれからの児童・生徒指導」 -発達課題の視点から見た児童・生徒指導の評価について-(栃木県教育委員会)

ただ、アンケートには「行動の記録」の在り方そのものについての否定的な意見も多く、「道徳では行動を評価しないということに決まったはずなのに、これで評価するというように一貫していません」といった意見や「多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる」という意見のように、他の教育活動・理念との一貫性の観点からそもそもの必要性を疑う声も多くあがりました。

School Voice Projectでは、今後も引き続き皆さんと一緒に、適切な評価の在り方について考えていきたいと思います。

【このようなアンケートを作成したいと思った方へ】
「フキダシ」は、現役の教職員の方が無料で登録できるWEBアンケートサイトです。このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にあるみんなに聞きたいことに寄せられた投稿から作成されました。投稿内容をもとに定期的にアンケートを作成しますので、フキダシでアンケート化してほしい話題がありましたら、ぜひユーザー登録をして投稿してください!


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学校の校則・ルールを、生徒・先生・保護者が対話をしながら見直していきたい!

そんな想いからスタートした認定NPO法人カタリバの「みんなのルールメイキング」と、NPO法人School Voice Project( SVP )がオンラインイベント「学校における”対話と民主主義”を本気で考えよう!」を共同開催しました。(当日のプログラム等の詳細は こちら

後編では「みんなのルールメイキング」事業担当の浜田さんの話と、ルールメイキング教員アンバサダーである3名の実践例から、反対派の先生ともどう対話するか?を探ります。

SVPの武田さんが目指しているビジョン・ミッション、および北欧の学校事例から学ぶ”対話”と”民主主義”のステップが知りたい方は、ぜひ以下の前編をお読みください。

※登壇者のプロフィールもこちらからご覧ください。

「対話っていいよね」だけでは越えられない壁 

司会(逸見) 第1部の後半は、認定NPO法人カタリバ『みんなのルールメイキング』浜田さんのお話を伺います。自己紹介からお願いします。

浜田 19歳のときから、マイプロ(マイプロジェクト)として「みんな辛くても我慢しているのに、あの人はずるい!ではなく、みんなが幸せになれるよう、環境を自分達で変えていこう!と思う仲間を増やすこと」を掲げています。

SNS上でよく目にする「あの人だけずるい」「こんな要望はおかしい。みんなで我慢するべき」。そんな攻撃的なコメントを見るたびに、悲しい気持ちになるんです。

でも、そういう攻撃的な発言をする人も、きっと何か辛いものを抱えているはずで。自分も何かを変えたいと思っているけれど、その方法が分からない。だから攻撃や我慢という形でしか表現できない。「本当はこうなってほしい」「ここを変えたい」という思いを、建設的なアクションに変えていけないかと考え、主権者教育に関わる活動を続けています。

ですが、武田さんの話(前編)で、「民主主義の第一段階からつまずいている」という話があったように、大人になってから突然「自分の声を上げよう」といわれても、そのハードルは非常に高い。

例えば、「自分の暮らす街をどうしたいか?」を語り合う場が開かれたとして、そういった場に参加するのは、大学生までのいわゆる「学校」に通っていた時代に、社会について関心を持つ機会があった人や、自分で何か環境を変えた経験がある人が中心だと聞きます。

だとすれば、そういった経験を早い段階で積む機会を多くの人が持てるようにしたい、という思いが今のマイプロに繋がっています。

逸見 学生時代から活動を始めたとのことですが、そのころはどんな活動をしていたんですか?

浜田 小学生を対象とした模擬選挙に関わったのが、始まりでした。

逸見 模擬選挙での経験が、今の活動につながっているんですね。

浜田 はい。ただ、模擬選挙には限界も感じました。例えば給食のメニューを決める模擬選挙なら、自分の好きなものを選んでも誰も傷つきません。でも実際の社会では、自分の意見や「好き」を主張することで、対立が生まれることもある。そういったリアルな体験をすることも大切だと考えていたところ、ルールメイキングに出会いました。

ルールメイキングでは「対立」ではなく「対話」を大切にしています。ここでいう「対話」は、気軽なおしゃべりや情報交換としての「会話」でも、どちらが正しいかを決めるための「議論」でもありません。お互いの背景を深く理解し、本音で意見・視点を交換し合うことで、新しいアイディアや可能性を見出していくプロセスなんです。

それでもプロジェクトの途中段階では、「先生は押し付けてくるだけ」「生徒はわがままを言うだけ」という対立構造が生まれがちです。

また最近は、対立し傷つけあうことを恐れるがゆえに、対話が表面的になってしまうという課題も感じています。例えば、利害関係のない他校の生徒との交流では楽しく話せるのに、自分の学校でルールを決める段階になると、気を使いすぎて感想の共有だけで終わってしまったり、「なぜそう思ったの?」と理由は聞いてはみるものの、「私はこう思います」「はい、分かりました」と、本音の対話を続けられず、一問一答で終わってしまったりすることがあります。

対話が大切だということは、おそらく誰もが理解していると思います。でも「対話っていいよね」だけでは越えられない壁があります。そこで私たちは、対話がうまく行かない状況を、「対話のスキルの問題なのか」、「そもそも挨拶すらできない関係なのか」「目標の共有ができてないのかというように分解して考えるようにしています。

例えば目標の共有ができていない場合は、「いい・悪い」のジャッジの前に、まず「幸せな学校づくり」というテーマで対話を始めます。「幸せってそもそもいつ感じるんだろう?」と問いかけ、今の学校の「残したいところ」と「変えていきたいところ」を出し合う。そうした対話の場を、具体的なルールの良し悪しの話に入る前に意識的に設けています。

良い対話を実現するため、哲学対話や組織開発の手法など、ルールメイキングとは少し違った分野からも学んでいます。まだまだ試行錯誤の段階ですが、現場の先生方と一緒に、よりよい方法を見つけていければと思っています。

現場からはじまる変革 ~3つの学校の挑戦

武田 対立解消や、ファシリテーションのトレーニングは必要だよなと感じています。子どもも大人も。民主主義のスキルですよね。

カタリバさんの活動は、子どもたちだけでなく、教職員たちのコミュニティも作りながら社会を変えようとしているのが素晴らしくて。時にトップダウンの改革が必要なこともありますが、基本的には現場の教職員が学び合いながら変えていくスタンスは、私たちSchool Voice Projectともまさに同じです。

浜田 ありがとうございます。実は教職員自身による小さなルールメイキングが、すでに進んでいる学校もあるんです。「今話しかけないでください」カードを作って集中タイムを設けたり、BGMを工夫したり。私たちは広く事例を知っていますが、現場で生きている教職員たちこそが、実際の状況をよく理解されています。お互いの持ち味を活かして、助け合える仕組みを作っていきたいですね。

逸見 どんなに小さなことでも、職場で新しいことを始めるのは勇気がいりますよね。私自身もそうで。仲間と一緒に考えていけることが心強いです。

司会(逸見) では、ここから『第2部:現場ではどのようなことが起こっている?』に移ります。ルールメイキング教員アンバサダーとして活躍している内田卓先生・小瀧智美先生・辻屋雅明先生より、それぞれの取り組みを紹介いただきます。

内田 つくば市立研究学園小学校では「ちょこルル(ちょこっとルールメイキング)」という取り組みを行っています。ICTを活用して全員の意見を画面に反映させることで時間を短縮し、普段あまり発言しない生徒の声も平等に拾い上げています。学級活動の中で、自分の意見が反映される経験を重ねることで、子どもたちの主体性を育てていきたいです。

小瀧 前任校での実践をいろんなメディアに取り上げていただいて、今も様々な方から声をかけていただいてます。
最近、「世の中には理不尽がたくさんあって、学校は理不尽を学ぶところだよね。今の子どもは我慢できないよね」という先生の声を聞きました。でも、学校は理不尽を我慢する場所じゃなくて、むしろそれを解決する方法を学ぶ場所だと思うんです。

ただ、生徒の声を聞くためには、まず教員側が自分を大切にできる環境が必要で。労働環境も大変だし、教員自身が理不尽さを感じている中では、子どもたちの声に耳を傾ける余裕もないんじゃないか。そこが今、もやもやしているところです。

辻屋 山梨県笛吹市立春日居小学校で、私個人は「高度に自由を行使できる子供の育成」を最終目標に掲げています。自由とは好き勝手にすることではなく、合意形成や他者理解、道徳性や思考力など、様々な力を総合的に発揮するものだと考えています。

具体的な取り組みとしては、「シャープペンシルの禁止」の撤廃や、「学習に関係ないものの持ち込み禁止」を「先生やみんなと相談する」というルールに変更しました。特に良かったのは、校則の変更手続きを校則自体に組み込み、毎年見直す仕組みを作ったことです。

「対話って難しい」と言い合いながら、共に歩む仲間

司会(逸見) ここからは、第2部のクロストークを始めます。事前質問では、反対する教職員への対応について、多くの質問が寄せられていました。
取り組みを続ける中で、モチベーションが折れそうになることもあったと思います。教職員間の多様性をどう認め合い、巻き込んでいったのか、お聞かせいただけますか?

小瀧 やっぱり生徒たちの姿が、一番の原動力になりますね。準備を重ねた生徒たちが、反対される悔しさで涙を流す姿はもう見たくないと思って。あえて反対派の先生のところに個別に話をしに行ったりもしました。個別に話すと、分かってくれる先生も多くて。私自身も辛い瞬間は何度もありましたが、少しずつ理解が広がっていったように思います。

内田 つくば市の場合は、市全体での取り組みだったので、みんなで一緒に始められたのがよかったんです。1年目は「実際どうやったらいいのか」ってみんなで考えるところからはじまって、2年目からは各学校で色んな工夫ができるように。段階的に進めていけたのは大きかったですね。

辻屋 今、まさに悩んでいるところですね(笑)。始めるときは細かく説明して分かってもらえても、新しい先生がどんどん入れ替わってくると、最初の理念が理解されなくなって形骸化してしまう。ここの引継ぎはもっと丁寧にすればよかったなって。

ただ最近、言葉だけで納得してもらうのは難しいかもしれないとも思うようになりました。6年生なので下級生の前でリーダーシップを発揮する場面もあるんですけど、そういう子どもたちの成長する姿を見てもらうことで、「やっぱり効果はあるんだな」って実感してもらえるといいのではないかと。

浜田 このような場に来られる教職員の皆さんは、もともと「こういう取り組みはいいな」って思って来てくださっていると思うんです。でも実際の学校現場では、新しいことを始めることへの不安が大きい。「反対」というよりも、「これをやったらどうなるんだろう」という不安が、最大の障壁になっているように感じます。

だからこそ大切なのは、「校則を変える」という話からではなく、「子どもたちにこういう力をつけていきたい」という、誰もが共感できるストーリーから始めること。そして実際に取り組んで、具体的な変化を見せていく。不安を感じている先生にとっても、納得できる形で示していく。そういう視点も大切かなって思っています。

武田 変えていくときには「あの手この手」でやっていくしかないですよね。本当に様々な苦労があるんだろうなと想像します。

皆さんのお話の中で、二つの気づきがありました。一つは、これって終わりのないプロセスなんだなということ。今年うまくいったなって思っても、来年また元に戻そうという動きが出てくるかもしれない。でも、そういうこともあるものとして歩んでいくこと自体に、価値があるんだなって感じています。

もう一つは、対話の本質についてです。意見の違う人と向き合うとき、単に「なぜそう思うんですか?」って聞くだけでは、水掛け論で対話が深まらない。その人がそういう考えを持つに至った背景にある経験や、見てきた景色を知りたいなって。

私たちが「ルールメイキングが大切だ」と思うようになった背景にも、それぞれのエピソードや出会いがあるように、否定的な意見を持つ先生にも、様々な経験や事情があるはず。踏み込んで理解し合おうとすることはすごくエネルギーがいりますが、そこまで深く対話することにも意味があるのかなと感じました。仲間と一緒に「難しいな」って言いながら、共に歩んでいきたいです。

先生たちからのチャット

ルール作りというよりも、自分の必要を要求できること、というのが大事なんですよね。

ルールメイキングでもありつつ、探究という感じがしますよね。いろんな人と対話して、調査して、やってみるという。まさに探究サイクルな感じがします。

ちょこルル、名前がいいですね!

どんな取り組みに対しても、反対派はいますよね。浜田さんがおっしゃる通り、子ども達がどんな姿になることを目指すのかという共通理解を対話を通してしていく必要がありますよね。武田さんがおっしゃる「背景」もとっても大事。自分の主張も大切にしつつ、相手にも考えがあることも理解して対話することが大切なんだなと思いました。

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