学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

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昨年、NPO法人School Voice Projectでスタートした「学校の居心地プロジェクト」。

きっかけとなったのは、WEBアンケートサイト「フキダシ」に集まった、学校の(物的・空間的環境な意味での)居心地についての教職員の皆さんからの声でした。

「とても居心地がよいと思う」「まあ居心地がよいと思う」という肯定的な選択肢を選んだ人は約半数、職員室など、教職員が仕事をするための空間については、肯定的な回答は約3割。少なくない子どもたちや先生たちが、心地よいとは言えない環境で学んだり働いたりしている実態が見えてきました。
(アンケート結果詳細はこちら

「学校の居心地プロジェクト」での取り組みの一つとなる「#学校にYogiboを置いたら」実証実験では、全国から公募した5つの学校のさまざまな場所にYogiboを設置し、子どもたちや先生たちの心や学び、関係性にどのような影響を与えるのかを探っていきました。

この記事では、協力校の1つである北星学園女子中学高等学校の教員である黒岩萌実さんと高野路子さんに、Yogiboの設置による変化について聞きました。同校の教員や生徒向けに実施されたアンケートの結果も合わせてご紹介します。

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学校の中にもっとリラックスできる空間を

—— 「#学校にYogiboを置いたら」の実証実験には、なぜ応募しようと思われたのでしょうか?

黒岩:私自身、アメリカに住んだりいろんな国に滞在したりしてきたのですが、その中でも日本は一番“ちゃんとしていないといけない国”だなと感じました。例えば、アジアの国であれば疲れたら当たり前のように路上で休んでいるのに、日本で同じことをしたらおかしな目で見られる。身なりや行動を含め、ちゃんとしなければいけない社会が生徒たちを苦しめている側面もあると思っています。

固いものばかりの学校にYogiboのような柔らかいものがあることで、生徒たちの心もほぐれていくのではないかなと。学校がもっとリラックスできる場所であることが直接的に不登校の生徒を減らすことにつながるかはわからないけれど、地続きなんじゃないかなとも思っています。学校の中に「居心地」という視点を入れることは、教員にとっても生徒にとっても、いいことだと思っています。

—— Yogiboを校内に設置する前には、居心地の良さを意識した空間はあったのでしょうか?

黒岩:校内にEnglish lounge(イングリッシュ ラウンジ)という広いスペースがあり、以前はそこにソファやビーズクッションが置いてありました。けれど、感染症の流行をきっかけに撤去することになってしまって。当時、「授業中に寝っ転がって本を読むのはよくない」という教員からの声もありました。

中高1年生の教室に設置。仲が深まるきっかけに

——実際にYogiboを置くことが決まったとき、教員からはどのような反応がありましたか?

黒岩:教員に向けてアンケートを取ってみると、想像以上に共感する声が多かったですね。回答者は教員数の半数ほどだったのですが、それでも反対意見がほとんどなかったことには驚きました。

高野:「本当はもっと居心地の良い場所があるといい」という声は、予想していたよりもありましたね。Yogiboが届いてからは、まずは教員たちで座ってみることからスタートしました。その時間は和みましたね(笑)

教員の声

「学校の居心地と生徒たちの学びの成果は関連すると思う」と回答した方の主な意見

居心地のいい場所でリラックスした状態で勉強した方が、勉強がはかどるはずだから。

気持ちが落ち着いていないとやるべきことに向かうのは難しいと思うから。

1日の大半を過ごす学校で自分の居場所があることは、精神的な安定を生むことになると考えています。学びや友人、教員と過ごす時間が安心安全な場所であって初めて学習に集中できると思います。

学校の居心地は、言葉を換えれば学校の心理的安全性ということになると思います。心理的安全性が確保された場所では、生徒は誤りへの過度な恐れをなくし、誤りからも学びが生まれる土壌が生まれると思うからです。また、同様の心理的効果は教員の仕事の仕方にも良い波及効果を生むと思います。

——教室内にYogiboを設置してから、生徒たちはどのような様子でしたか?

黒岩:Yogiboを設置したのは5月からだったので、生徒同士の関係構築につながったらいいなと思い、中学1年生と高校1年生の教室に置くことにしました。実際に置いてみると、中学1年生のあるクラスではYogiboの上に生徒たちが重なり合って、自分たちのことを「ミルフィーユ」と言っていました(笑)それくらい仲良くなっていましたね。休み時間にリラックスできる環境があるからか、「Yogiboがあれば9時間授業でも大丈夫!」という声もありました。

高野:私が担任している高校1年生のクラスでは、「ここで漫画読むの最高!」と言いながら、放課後にYogiboに寝っ転がって漫画を読んでいる生徒がいました。Yogiboに独自の呼び名をつけている生徒もいましたね(笑)

あとは、実は以前、総合的な探究の時間の中で「学校が楽しくなるにはどうしたらいいのか?」をみんなで考えたことがありました。その中で「Yogiboを置く」という意見が出ていたんです。それもあって、Yogiboが来ることをずっと楽しみにしていた生徒が多かったですね。

話し合いを重ね、学校での居心地を考えていきたい

—— Yogiboを置くことの難しさを感じる場面はありましたか?

黒岩:衛生面を気にする生徒が多かったのは意外でしたね。私は気にならないのですが、中にはYogiboを床に置くことへの抵抗感がある生徒もいるようです。

高野:Yogiboの下にレジャーシートを敷いてみましたが、あまり意味がなかったですね。ずれてしまいますし、ほこりもついてしまっていました。置く場所には工夫が必要かもしれません。あとは、割と同じ生徒がYogiboに座る傾向がありましたね。「他にも座りたい人がいると思うよ」とは言ったのですが、あまり変わらず…。そこはやはりクラスの雰囲気や人間関係が影響するかなと思います。

黒岩:今回はYogiboの設置が各クラス3日間だけだったので、特に譲り合うのが難しかったかもしれませんね。中学1年生では「常連さんだけが座ってるんじゃない?」と伝えたら、「今日からご新規キャンペーンやります!ご新規さん座ってください!」と周りの子に声をかけている生徒がいました(笑)

—— 最後に、学校の居心地についての考えを聞かせてください。

高野:教室には座っていい場所が基本的に自分の席しかありませんよね。「ちょっと貸して」と言って友達の席を借りることはあるけど、自由に座れる場所はほとんどありません。それぞれの机や椅子以外にも、フリースペースのような空間で好きなように過ごせる場所があるといいなと思っています。

黒岩:Yogiboを授業中に使うことに関しては、教員によってさまざまな考え方があると思っています。積極的に授業の中で使う先生もいれば、休み時間の使用に留めておいた方がいいと考える先生もいます。なので、教員や生徒でYogiboの使い方や居心地について話し合っていくことは、授業や学校についての価値観をアップデートするいいチャンスではないかなと思っています。

——黒岩さん、高野さん、ありがとうございました。


Yogiboを使用した生徒の声

北星学園女子中学高等学校では、中学1年生と高校1年生の各教室に3日間ずつYogiboを設置しました。Yogiboを使用した生徒向けのアンケート結果をご紹介します。

Q1:教室にYogiboが置かれていた3日間のうちに、何回程度Yogiboを使用しましたか?

多くの生徒は、3日間のうちに少なくとも1回はYogiboを使用したようです。最も回答数が多かったのは、1〜3回の使用で41%。一方で、11回以上使用した生徒は全体の26%にのぼり、回答者によって使用頻度にばらつきがあることがわかります。

Q2:Yogiboの効果について、各項目についてどの程度同意しますか?

すべての項目において、7割以上の人が肯定的な回答をしました。「とてもそう思う」「そう思う」と回答した人が多かったのは、「ワクワクする・楽しい(92%)」「リラックスできる・落ち着く(91%)」でした。

以下は、使用回数が0〜6回の人と7回以上の人に分けたグラフです。使用頻度が少ない人よりも多い人の方がすべての項目において「とてもそう思う」と答えた人の割合が高く、使用頻度と各項目の評価に相関があることがわかります。

Q3:Yogiboを教室に置くことについて、あなたの意見を教えてください。

10分休憩中にYogiboに早くダイブしたいので、授業準備を早く済ませることができました。これからもおいてほしいです!【中学1年生】

Yogiboがあったら、リラックスできるし休み時間にみんなで座りながら話したりしたら、あまりしゃべらなかった人とも喋れてみんな仲良くなれるから、ずっと教室に置いてほしいと思った。【中学1年生】

疲れがたまっているときにリラックスでき、次の授業に集中できることがいいと思いました。【中学1年生】

授業終わりにリラックスできたり、休憩できるのでYogiboが教室にあってよかったと思いました。でも、独占している人がいたので今後置くなら、2つくらいあると教室の全員が使えるのかな?と思いました。【中学1年生】

疲れた授業の後の休養スペースとなり、次の授業にも集中することが出来ました!!【高校1年生】

どうしても占領する人が出てくるので譲り合いの心は大切だが、気持ちよさそうにみんなで寝っ転がっているのを見るのは好き。もちろん座るのも、家に帰りたくなくなるほど好き。【高校1年生】

夏場はちょっと汗が気になるのでどうにかしてほしいですが、学校に行くモチベーションになってたり、友達と話す交流になってたのでとてもいいと思いました。【高校1年生】

置いてあると確かに授業とは違う自由さがあってrelaxはすごくできた。けれど欠点としては色んな人が使っているので不清潔さが出てきてしまうと思う。もしこれからも置くなら洗ったり、シュッシュなど匂いものをかけた方がいいと思う。【高校1年生】

まとめ

多くの生徒にとって、Yogiboが置いてあることでリラックスできたり、友達との距離を縮めることに繋がったりしていることがアンケートを通してわかりました。一方で、実証実験では3日間のみの設置だったため、使える頻度に限りがあり「一部の人のみが使っている」という声もありました。その点においては、「譲り合いが大事」「ルールを決める必要がある」「Yogiboが2つあるといい」など、お互いが気持ちよくYogiboを使っていくためのアイデアも集まりました。

近年、中教審の特別部会の議論の中で取り上げられている授業の持ちコマ数(※)。教員の多忙解消に向けて、「持ちコマ数の上限を設定すべきではないか」という提言が研究者グループや教職員組合からも出されています。実際に上限を設定するとしたら、週何コマ程度になるとよいのでしょうか?

全国の学校に勤める教職員の方に、授業の持ちコマ数の現状とそれに対する意見を聞きました。

※参考:教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年9月15日(金)〜2023年12月31日(日)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :335件

※現在、一般的に小学校では学級担任制(一人の学級担任の教員がほとんどの教科を教える体制)、中学校・高校では教科担任制(一人の教員が専門教科を受け持ち、複数の学級で授業を行う体制)が採られています。そのため、例えば、小学校における持ちコマ=6コマとは6回の異なる授業を行うことを意味する場合が多いですが、中学校・高校においてはそうではないことが多いです(3つのクラスで異なる授業を2回ずつ行う等)。また、特別支援学校においては、個別の指導計画に沿って授業が行われるため、他の校種とはさらに事情が異なります。その点を加味して下記のアンケート結果をご覧ください。

アンケート結果

設問1 現在、受け持っている週の授業コマ数は?

Q1. あなたが今、週のうちに受け持っている授業のコマ数をご記入ください。
※コマ数とは、会議等を含めない「授業」のコマ数を指します(以下の設問においても同様)。

受け持っている授業のコマ数においては、勤務している校種によって大きな違いが見られました。児童生徒の学齢が低い校種であるほど、授業のコマ数は多く、小学校では全体の74%の教員が21コマ以上を担当していることがわかりました。

設問2 現在、受け持っているコマ数の負担は?

Q2. あなたは今、受け持っているコマ数についてどう感じていますか?

校種別グラフ

持ちコマ数別グラフ

担当している授業コマ数について、半数以上の教員が「負担」「どちらかというと負担」と回答。校種別に見ると、担当しているコマ数が比較的多い小学校や特別支援学校においては特に負担を感じている人が多いことがわかります。

持ちコマ数別に見ると、担当している授業コマ数が多いほど、負担を感じている人は多い傾向が見られます。週26コマ以上担当している人においては、96%が「負担」「どちらかというと負担」と回答しました。

「10コマ以下」を選択した方の主な意見
負担、もしくはどちらかというと負担を感じている

教頭のため、教材研究なども含めると教頭業務をする時間が勤務時間外に及ぶことが多くなるため。【小学校・教頭】

教務主任(担任外)の仕事が多く、時期によってはこのコマ数でも多いと感じます。【小学校・教員】

加えて会議が5コマあり、会議準備、授業準備が十分にできないと感じる。【中学校/高等学校・教員】

妥当、適切だと感じている

週10コマ以内という規定がある、市独自のポジションです。担任外として、授業以外の時間は「学校生活が困難な児童の支援」「不登校児童のお迎え」「補欠授業」「校外学習引率」「来客対応」等の対応をしています。業務内容が不規則なため予定が立てにくく、決められた授業時数が増えると対応できなくなります。【小学校・教員】

管理職であるため授業は受け持たず、学校全体の授業改善や学校改革に時間をかけている。自身が授業をやりたい気持ちはあるが、子どもたちと直接かかわる最前線の先生たちが、よりよい授業を行っていくための環境や仕組みの整備も重要な仕事であるため、週3時間は妥当と考えている。【中学校・教頭】

教務主任のため授業コマは軽減されており10コマ程度であるが、それ以外の仕事が多く妥当である。【中学校・教員】

楽、どちらかというと楽だと感じている

会議や出張等含めると20コマになってしまいますが、それでも、負担なく準備ができています。【高等学校・教員】

「11コマ以上15コマ以下」を選択した方の主な意見
負担、もしくはどちらかというと負担を感じている

半日勤務で、20コマ中15コマの授業のため準備に1コマしかない。さらに専門外の理科が6コマあり、実験や観察の準備、片付けが終わらない。【小学校・教員】

学年が3種類。中学は理科なので専門外の授業も行わなくてはならない。授業準備に何時間もかかる。精神的に追い詰められてつらい。実習をするとレポートの採点もある。【中等教育学校・教員】

学年主任、ICTの担当、教務の仕事などがあり、毎日が追われる感じがするから。【高等学校/中等教育学校・教員】

学校の中では妥当と言われる持ちコマ数だが、授業の質を保つ上では多いと感じている。 また、授業のコマ以外に会議がたくさん入り、実質授業準備が勤務時間に入らないから。【高等学校・教員】

妥当、適切だと感じている

他の人と比べると少ない方なので、妥当だとしたが、授業の準備と片付け、授業研究、道徳に総合や特活、学年が落ち着かない場合は巡視や入り込み、別室の対応と子ども達に直接関係することでも色々と仕事はあるので、あっという間に時間が過ぎる。【中学校・教員】

授業数は少ないと感じているが、主幹軽減を受けていて、教務主任や主幹としての仕事と両立するには妥当な時間と考えている。【中学校・教員】

楽、もしくはどちらかというと楽だと感じている

授業以外の業務の多忙さにもよるが、空きコマに授業準備ができ、全般的に余裕があると感じているから。【高等学校・教員】

担っている役割から配慮されたコマ数であるため、通常(他の教員)は17程度にはなっている。そのため、授業の展開は楽だが、全体の業務としての余裕は大きくない。【中学校/高等学校・教員】

「16コマ以上20コマ以下」を選択した方の主な意見
負担、もしくはどちらかというと負担を感じている

教材研究をする時間がない。ICTを活用した授業を新しく考える時間や準備をする時間もない。【中学校・教員】

授業準備、教材研究、授業片付けなど、に合わせて、校務分掌の業務をおこなうには時間がなさすぎるため。【小学校・教員】

空きコマを蝕むように大量の行事ごと(マラソン大会や水泳指導)があり、結局空きコマになっていないから。空きコマ数を増やすことも大切だが、同時に他の行事をもっと減らさないとフェイクの空きコマ数を増やすことにつながりかねない。【小学校・教員】

妥当、適切だと感じている

担任でない教務主任の立場として、やや多い時数であると感じているが、教務主任の業務量は時期によって変動するので、調整していけば可能。むしろ、これより少ないと担任の授業時数が多くなる。【小学校・教員】

1学年4クラスで教科3コマ。担任なので、学活、総合、道徳を実施。以前は担任もちで教科週3コマを6クラスしたこともあったので、週22コマであった。その時は、事務仕事はとてもじゃないが、勤務時間内に終わらなかった。それと比べたら、事務仕事出来る時間があり、妥当だと感じる。【中学校・教員】

楽、もしくはどちらかというと楽だと感じている

これまでの学校(知的障害特別支援学校)では、待ちコマが25-28コマでほぼ空きコマがなかった。今の学校(ろう型)では高等学校に準じた授業のコマ数となり、負担が減った。【特別支援学校・教員】

児童6に対して教員が12人いるため。【特別支援学校・教員】

「21コマ以上25コマ以下」を選択した方の主な意見
負担、もしくはどちらかというと負担を感じている

教科数も多く、指導要領の内容も増え、他の業務に圧迫され授業準備の時間もとれません。多忙を極め、本業の授業に力を十分にそそげないのが悔しいです。教員一人一人の時間的精神的余裕が教育の質を高めると思います。どうかコマ数を減らしてほしいです。【小学校・教員】

小学1年生の担任で過去に何回か経験があるので、25時間でもなんとかやっていけるが、中学年や高学年だと、教材研究が追いつかない。【小学校・教員】

週29時間のうち21時間だが専科の授業でもほぼ教室で見ておかないと行けないので、実質空きなんてない。【小学校・教員】

連絡ノート等の点検、教材研究等で1日2〜3時間は必要。今持ち時間が22時間だが、連絡ノートの点検すらできない日がある。【中学校・教員】

妥当、適切だと感じている

外国語専科で1教科のみだから。担任として複数教科をもつなら、私のいまの持ちコマ25は「多くて負担を感じる」になる。【小学校・教員】

時間講師なので、行事の分担や校務分掌などは一切ないため。【小学校・教員】

楽、もしくはどちらかというと楽だと感じている

教科横断型のカリキュラムをたくさん作りたいので、できれば多くの授業を担当したいです。【小学校・教員】

非常勤講師なので、分掌、学級、部活もなく専任をしていた頃の10分の1くらいの負担感です。テストの採点と受け持ち生徒の名前把握は大変ですが、それもマークシートや自動採点が進めば、25コマ程度なら余裕を持って回せます。非常勤講師を増やすのも学校の負担を減らす方法の一つかもしれません。【小学校/中学校・教員】

「26コマ以上」を選択した方の主な意見
負担、もしくはどちらかというと負担を感じている

昔と違って知識の教え込みではなく、今は主体的対話的で深い学びを目指さなければならない。そのためには多くの教材研究の時間が必要だが、全く足りていない。【小学校・教員】

毎日上記の授業時間だと、基本的に児童がいる時間は基本授業をしていることになる。そのための準備や片付け、評価は全て放課後になるが6時間を終えた後の3時15分以降からでは例え休憩時間を削ったとしても時間の確保はできない。さらには分掌もあるので確実の長時間の残業をせざる得ない。【小学校・教員】

宿題をみる時間、授業準備の時間がとれない。6時間目を終えて、毎日の集団下校指導を終えたら勤務時間が過ぎるので、全ての仕事が勤務時間外になる。【小学校・教員】

担任時代はそのくらいでちょうどいいかと感じていた。しかし専科になってみるとプリントや宿題のチェックが一度に一学年分来るなど、担任に比べて仕事量の調整が難しいことに気づいた。空き時間は補教や教室に居られない児童の対応、電話番に管理職の雑用も「専科」ということで多く回ってくる。また、一番大きなものは休んだ時に振替が必要なこと。教科担任も始まっているため、この数でも振替が効かない。【小学校・教員】

妥当、適切だと感じている

放課後に事務的業務や授業準備の時間が持てるため。【特別支援学校・教員】

何時間か受け持ってもらえればありがたいが、基本的にはしょうがないと思っている。【小学校・教員】

設問3 教員が心身の健康を守るための最大のコマ数は?

Q3. 教員の心身の健康を守るために 「最大でもここまでに収めるべき」と思うコマ数を教えてください。

教員が心身の健康を守るために担当できる最大のコマ数においては、「16コマ〜20コマ」と回答した人が最も多く、全体の63%に上りました。校種別見ると、「10コマ以下」と回答したのは小学校で4%であったのに対し、高校では54%と、回答に大きな違いが見られました。

設問4 授業の質を維持するために望ましいコマ数は?

Q4. 十分な授業準備をして授業の質を維持するために 「できればこの程度が望ましい」と思うコマ数を教えてください。

授業の質を維持するために望ましいコマ数は、小学校と中学校・高校で大きな違いが見られました。小学校では「16コマ以上20コマ以下」と回答した人が70%と最も多かった一方で、中学校では「11コマ以上15コマ以下」と回答した人が63%と最も多く、高校では68%でした。特別支援学校においては、「11コマ以上15コマ以下」と回答した人と「16コマ以上20コマ以下」と回答した人はほぼ同数でした。

設問5 勤務時間内に業務を終えるのに望ましいコマ数は?

Q5. 勤務時間内に業務が終わるために 「本来この程度に収める必要がある」と思うコマ数を教えてください。

設問4の「授業の質を維持するために望ましいコマ数」とほぼ同様の結果となりました。全体的に設問4よりも少ないコマ数を上げる人が多い傾向が見られました。

設問6 持ちコマ数についてのあなたの意見は?

Q6. 授業の持ちコマ数について、あなたの意見を自由にお書きください。(任意)

授業以外の業務が多すぎる

授業以外の業務が多い現状ではもちコマが減ったところで授業準備に充てられるかは、はなはだ不安である。授業時間は14でも、ホームルーム、総合探求、自立活動(通級指導)、会議はそこに上乗せされていく。その仕組みをどうにかする方法はないか。【小学校・教員】

学校規模が半分くらいの学校に異動になり、時数は減ったものの教科書が前任校と違う為授業準備自体やり直し、そこに未経験の分掌業務(GIGAスクール、ボランティア等)が有る為負担自体は大きくなった。時数も大事だが、その他の業務の精選も至上命題だと思う。【小学校・教員】

学習指導要領が改訂になるたびに○○教育が増えそれに伴う新たな研修や授業準備が必要となり授業を圧迫している。新しい内容をいれるなら旧のものを減らし授業に余裕をもたせる。理想としては1日5コマの25時間。専科を入れて20時間以内にすればかなりの余裕が生まれる。時間割をいじくり放課後の時間をつくるのにも限界がある。【小学校・教員】

授業のみならず、分掌や担任、生徒指導の業務が重なっているかどうかによって、持ちコマ数の妥当性が変わってくると思います。なにもなければ高校でも18時間でもなんとか業務がまわると思います。かわりに諸々の業務を抱えていると、10時間でも多く感じると思います。【高等学校・教員】

現状だと、授業の他に、LHRや総探の時間、そして学年会や分掌の会議などが入り、空き時間がない日もあります。担任をしていると、その空き時間に保護者対応や生徒対応が入ったりして、授業研究に費やす時間はほぼ勤務時間にはない状態です。教員として、一番大切な仕事が授業なのだとしたら、現状の空き時間では、到底授業研究などする時間は存在しません。授業以外の仕事が多いことも鑑みて、持ち時間の議論をしなければならないように感じます。【特別支援学校・教員】

十分な授業準備や授業研究をして、授業の質を保ちたい

良い授業がしたい。本当に子供たちの力を伸ばしたい。そのためには、見取りや準備の時間がかかります。【小学校・教員】

持ちコマが多いほど、授業準備に使える時間が減り、質は落ちる。もしくは、質を落とさないために時間外労働をして、身を削ることになる。本来ならば、オリジナルな教材を作ったり、本を読んだり研修を受けたりして、もっと良い教育を子どもにしてあげたいと思っている。【中学校・教員】

18時間が一人の教員の授業数の上限にしてくれたら、こんなに余裕のない苦しい毎日でなくなるのは確実。今は余裕がないせいで、例えば、返却物に一言添えるとか、休み時間に子供と遊ぶとかはほぼできない。図工でいうと、土粘土とか版画などの題材は、準備や片付けの時間がないので、とても今の状況ではできない。そのくらい、時間がない。【中学校・教頭】

一番学び続ける必要があるのが教師だと思うので、そのための時間を確保していくべきだと思います。その上でしっかりと学びや成果を評価軸にしてほしいです。だからこそ、まずは時間数の軽減がに必要だと考えます。【中学校・教員】

持ちコマ数以外の観点においても見直す必要がある

私の場合、今は外国語専科なので25あってもそこまで授業負担はありません。持ち教科数の方が負担感に影響するように思います。担任であれば、1日4コマ×5日が限度だと思います。【小学校・教員】

高学年において全ての教科を一人で指導するのは限界。特に単学級であれば、一人で行事の準備等もしなくてはいけない。よって、教科担任を全ての学科に配置して、例えば技術系教科は教科担任が指導するなどし、できる限り減らすべき。【小学校・教員】

適切なコマ数は年齢やキャリア、授業以外の負担によると思います。専任や常勤で授業以外の仕事があるなら、現在の状況を考えると10くらいでもいいと思います。新卒などだと教材研究も時間がかかるので、コマ数多いと破綻すると思いますし、非常勤講師はコマ単位で収入が決まるので、制限されても困りますが、年を取ってくると体力的にしんどいかもしれません。とはいえ、授業をするのが教員の全てであり欧米は校務分掌や雑務はほとんどないので、それを考えると負担軽減のために上限つけるのは本末転倒で、雑務の負担を減らすほうが優先だと思います【小学校・教員】

中学のいわゆる技能教科の場合、1人で全校生徒の評価をします。もちろんテストも採点も。また、管理すべき特別教室も1人で複数箇所あり、実習の準備や道具の手入れなどもあります。コマ数「だけ」が指標になると辛いです。【中学校・教員】

持ち数だけでなく、何教科受け持っているかや、担任がどうかなども大きく関わってくると思う。【中学校/高等学校・教員】

私は小学校の教員です。持ちコマ数が多いほど大変だとは一概には言えないかなと思います。T1とT2では負担の度合いが全く異なるし、教科担任なら、1時間分の準備で数コマ同じ授業をすることもあるからです。週あたりT1(あるいは単独)で15コマ、T2(支援が必要な子のサポート)で5コマくらいが教員にとっても子どもたちにとっても最適な環境だと思います。【特別支援学校・教員】

児童生徒と向き合う時間がほしい

余裕はあった方がいい。子どもたちは孤独で家庭という機能が崩壊しかかっている今、教師しかできない子どもへの寄り添いがあると感じている。授業準備への時間の余裕は他の意識へと繋がっていきます。【中学校・教員】

空き時間が保障されていることで、一日の流れに余裕が生まれます。毎日一言日記を書いているのですが、それに一言返事を書くこともでき、結果子どもたちとの関係が良好でトラブル対応に時間を取られることがほとんどありません。教師の時間的余裕って、すごく大切だと思います。【中学校・教員】

1日に2時間、空き時間があれば、放課後の仕事をそこで済ますことができ、退勤時間も早まると思う。また、児童指導が多い学校なので、毎日必ず空き時間があれば、他の子どもたちを待たせず、ゆっくり問題児童に向き合える。【高等学校・教員】

人員の確保やクラス定員の見直しが必要

人員に余裕がある学校なので、全体を平均すると13コマ前後、中には5コマという人もいる。持ちコマが少ないと気持ちに余裕も出てくるので、まず人員を確保することが先決だと思う。【中学校・教員】

教科が数学の為、どうしても習熟度別少人数指導となり、毎年3学年すべてを教えることになる。教材研究など出来ず、経験に頼るしかない状況である。もっと教員数を増やすか、1クラスの人数を大幅に減らし、2クラス3展開などせずにクラスで授業ができると良い。とにかく余裕が欲しい。【中学校・教員】

まとめ

担当している授業コマ数は小学校の教員が最も多く、生徒の学齢が上がるほど、コマ数が少なくなる傾向が見られました。校種を問わず、持ちコマ数が多く、負担だと感じている人が多いことがアンケート結果全体から読み取れます。

「コマが減っても授業準備に当てられるか不安」「授業の他に、LHRや総合の時間、学年会や分掌の会議などが入り、空き時間がない日もある」などの回答もありました。単に持ちコマ数が多いことへの負担感だけではなく、授業以外の業務の多さが負担感につながっている現状もあるようです。また、持ちコマ数だけではなく、担当教員の勤務年数や担当学年、教科数によっても負担感は違うという意見も目立ちました。

十分な空き時間があることは教員の負担感を減らすだけではなく、授業の質向上や教員が児童生徒一人ひとりに向き合う余裕にもつながっていきます。児童生徒がよりよく学んでいくために、教員が適切なコマ数で授業を担当することが不可欠ではないでしょうか。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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はじめに

学校現場に勤める教職員の皆さんの中には、教職員組合の存在を「遠い」「知らない」と認識している人は少なくないでしょう。

私は6年間、学校現場を離れ、教職員組合の役員として勤めた経験がありますが、その私でさえ、普段の勤務の中で、教職員組合を意識することはそれほどありません。しかし、教職員組合が果たしている役割にはとても大切なものがあります。この記事では、その意義・役割・課題などをまとめて解説します。

1.組合(労働組合)とは?

(1)「組合」とは共助の団体

そもそも組合(労働組合)とは、何でしょう。それは困った時の助け合いの組織です。例えば、水害で自分の家が浸水してしまったとします。そんなとき、自分の力で泥をかき出したり掃除をしたりして乗り切ることを「自助」と言います。自助が追いつかないような場合、消防や自衛隊など公的な機関による支援である「公助」を受けることもあります。しかし、自助や公助ではカバーしきれない問題もあります。そんな時に大きな力になるのが例えば、近所同士の自主的な助け合いやあらかじめ組織された互助会、駆けつけたボランティアによる支援などです。これを「共助」といいます。労働組合法2条には「この法律で『労働組合』とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。」と示されています。つまり労働組合とは、労働者が賃金や働く環境の改善を求め自分たちの生活や健康を守る「共助」の組織といえます。

(2)見えないけど大切な役割

労働組合は普段は目立ちませんが、社会の中で大切な役割をもっています。労働者と使用者の力関係は、当然、使用者の側が上になります。使用者が、給料や雇用条件、労働条件を勝手に決めてしまうと、労働者は安心して働くことができなくなります。ですが、労働組合を作ることで、労働者は使用者側と対等の立場で交渉を行うことができます。それは、法規で定められた労働者の権利です。

ちなみに労働者が労働組合を作ってもいいと定めた法規は何か知っていますか。そう日本国憲法です。憲法第28条で「勤労者の団結する権利および団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定されています。この根底には憲法13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」、25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」があります。働く者が過酷な労働環境や低賃金に苦しむことのないように力を合わせて声を上げるための制度を保障しているのです。

(3)労働組合の難しさ

一方、日本国憲法は12条で「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と定めています。働く者が団結し、使用者側に声を届けなければ、給料を守ったり、労働環境を改善したりすることはできません。ただ、労働組合を結成するためには多大な手続きが必要なので、次々と生まれる企業に対して結成が追いついていないのが現状です。労働組合のない企業では、労働者が厳しい環境に追い込まれることも少なくなく、「組合がある企業がうらやましい」という声が聞かれます。

もちろん、よいことばかりではありません。労働組合を結成すれば、運営のための資金が必要になりますから、組合員になると一定の組合費の支払いが発生します。また活動を前進させるには、中心となって働く役員が必要です。役員にならなくても、組合員として組合活動に時間や労力を取られることもあります。

労働組合には大きく「ユニオンショップ」(全員加入制)と「オープンショップ」(自由加入制)があり、企業によって異なります。オープンショップ(自由加入制)の企業のもとでは、組合が勝ち取った給料や労働条件が組合員でない社員にも反映されます。「組合に入らなくても権利が与えられるならそちらの方がいい」と考える「フリーライダー(ただ乗り)」が生まれてしまい、加入している人からすれば釈然としない気持ちになります。

労働組合の努力によって改善された給料や労働環境は、労働組合のない企業にも波及し、社会全体の生活の向上に寄与しているのは間違いありません。一方で、組織率は年々低下し、憲法が保障する団結権が社会の中で十分に活かされていないのは悩ましい問題です。

2.教職員組合とは?

(1)労働組合との違い

前置きが長くなりましたが、ここからが教職員組合の説明になります。

基本的に公務員は労働組合法が適用除外になり、労働組合を結成することはできません。その代わりに地方公務員法第52条第3項に「職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」と規定されています。条文から分かるように職員団体はオープンショップ(自由加入制)となります。また、職員団体には、いわゆる労働三権のうち、団結権と交渉権は認められているものの争議権(ストライキ権)は認められていません。また交渉権はあるものの、団体協約を締結する権利も与えられていません。しかし、教職員の賃金が決定されるプロセスの中で、その実権をもつ教育委員会との交渉権をもつのは教職員組合だけです。働く環境を改善するために、教職員の声を集め、交渉によって様々な条件を変えられるのも教職員組合だけなのです。

※なお、他国では教員のストライキ権が認められている国の方が多いと言われています。例えば、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、デンマークなどです。一方、日本同様、ストライキ権が認められていない国としては、中国、シンガポールなどがあります。

(2)教職員組合の活動や成果

教職員組合は戦後80年近くの歴史の中でさまざまな成果を上げてきました。詳細はここには書ききれませんが、分かりやすいところでは、産前・産後休暇、育児休暇の期間を広げ、出産、育児に関するたくさんの制度を獲得してきました。小学校の35人学級も、長年の教職員組合の訴えが実現したものです。現在、学校教育の大きな問題になっている教職員の長時間労働についても、教職員組合が国会議員との連携の中で、社会問題化し、「給特法」を改正することによって、月45時間、年間360時間の超過勤務時間の上限を法に位置づけるに至りました。ちなみに、これらの制度改正の裏側には輩出した国会議員・地方議会議員の活躍があります。そのために、多くの労働組合は、政策実現にむけ、法律・条例づくりに直接意見反映できるよう政治との結びつきを重視しています。

もちろん、他の労働組合と同様に、個々の組合員と管理職・教育委員会の間に発生するハラスメント、公務災害、権利行使などのトラブルの解決に向けて仲介や支援をしています。ただ、残念なことに、これら教職員組合の活動や成果は、多忙な学校現場では、あまり知られることがありません。

(3)先生の給料が守られる仕組み

組合が教職員の給料を守っていることもあまり知られていません。教職員の給料は、毎年、各都道府県の人事委員会が民間との均衡を見ながら勧告を出し、県当局と教職員組合の交渉を通して確定されていきます。その民間の給料は各企業の使用者と労働組合の交渉を通して決定していきます。「春闘」と言って、全国の労働組合が結束して、横並びで「A社は◯円上げたからウチも◯円上げよ」というように賃上げ交渉をすすめます。その結果が、最終的に公務員の給料にも反映されていくのです。教職員組合は、人事委員会や教育委員会に対して、民間との均衡だけでなく、教職員の働く実態が賃金に反映されるよう交渉します。最終的に12月の議会で確定した賃金は、4月に遡って支払われます。毎年、12月の終わりに給料やボーナスとは別に数万円から十数万円ほどの「差額支給」があるのは、労働組合全体の賃上げ交渉の成果です。また、自治体によっては、財政事情により、給料のカットを行う場合もありますが、教職員組合や自治体の職員団体は強く反対し、もし下げられる場合でも、何らかの交換条件を引き出そうと粘り強く交渉します。

3.教職員組合にしかない特徴的な活動

 教職員組合が他の労働組合と大きく異なる点として教育研究活動(通称、教研)が挙げられます。目の前の子どもの実態を出発点として「平和を守り、真実を貫く民主教育の確立」「わかる授業、楽しい学校」をめざして、全国の教職員と議論し、その成果を自らの日々の教育実践に生かす教研活動は世界的にも高く評価されています。この「子ども中心」の考え方は、組合活動全体にも見られ、少人数学級の推進を訴えていることも、子どもたちや学校を競争に駆り立てる全国学力・学習状況調査に反対していることも、子どもたちにゆとりあるゆたかな教育を実現したいという願いがあるからに他なりません。

4.教職員組合を取り巻く課題

教職員組合への加入率は年々、低下しています。それは「組合費や活動などの負担がある」「加入しなくても給料や権利は守られる」「組合が何をしているのか見えづらい」ことが原因であることは、ここまでで説明してきたとおりです。日本国憲法が保障する団結権を教職員自らが放棄してしまう現状はとても残念です。

それ以上に、私は、人と人が支え合う風土そのものが日本全体で崩れ始めているのではないかと危惧しています。「何かあっても自分で何とかすればいい」「自己責任でいい」「誰かと守り合うなんてわずらわしい」という考え方が生み出す社会は、弱者やマイノリティーには厳しいです。「もしかしたらいつか自分も」という不安と隣り合わせでは、決して成熟した社会とは言えません。「助けて」という言葉を誰もが遠慮なく言える共助の社会を守る一端を教職員組合を含む労働組合全体が担っていることをぜひ理解していただきたいと思います。