学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

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心身ともに満たされた状態を表す「ウェルビーイング(Well-being)」。

学校の多忙化や窮状が知られるようになっている昨今。NPO法人School Voice Projectは、学校で過ごす子どもや大人がより良い状態で過ごすために必要なことを考える対話イベントを開催しました。

場所は、東京都調布市に校舎を構えるドルトン東京学園 中等部・高等部。ゲストに公立小学校教員の森村美和子さんと、ばん走者・授業づくりネットワーク理事長の石川晋さんをお招きし、NPO法人School Voice Projectの理事も交えてパネルトークを行いました。イベントには60名を超える方にご参加いただき、参加者同士で対話をする時間も設けられました。この記事では、イベントの様子とともに、パネルトークのダイジェストをお届けします。

イベント概要 

・日時:2023年12月3日(日)13:00〜16:30
・場所:ドルトン東京学園 中等部・高等部(〒182-0004 東京都調布市入間町二丁目28番20)
・対象:教職員、教育に関心のある方
・主催:NPO法人School Voice Project
・協賛:株式会社Yogibo

登壇者プロフィール

●ゲスト:森村美和子さん
東京都内公立小学校の特別支援学級教員
学校心理士・教育相談コーディネーター

公立小学校の知的障害学級、通級指導学級、巡回指導で実践を重ねる。一人一人の違いを前提に、「子どもを変える」のではなく「環境を変える」実践に取り組み、GIGA端末等も活用した個々の特性・ニーズに応じたサポートなども工夫してきた。
また、2012年に東京大学先端科学技術センターの熊谷晋一郎氏と出会い、当事者研究の試みを参考に、教育の場で子どもたちと「自分研究」として新たな実践にチャレンジ。こちらは、著書『特別な支援が必要な子たちの「自分研究」のススメ』にまとめられている。https://bunshun.jp/articles/-/55798

●ゲスト:石川晋さん
ばん走者・授業づくりネットワーク理事長
横浜市立小学校教員・元北海道公立中学校教員

1967年、北海道旭川市生まれ。1989年北海道中学校教員として採用。以降、オホーツク、旭川、十勝の中学校を歴任し、2017年3月に退職。その後、日本中の学校を年間100校以上訪問し、飛び込み授業や校内研修に関わる。またオンラインでも全国の多くの先生たちと対話を続けている。2022年からは横浜市の小学校で再び教員として勤務している。著書に『学校とゆるやかに伴走する』と『笑顔と対話があふれる校内研修』などがある。https://toyokeizai.net/articles/-/688019

参加保障に関して

NPO法人School Voice Projectでは、《誰もが参加できる仕組みづくり》を目指しています。参加ハードルの高さをなるべく解消すべく、聴覚障害等をお持ちの方や日本語が不自由な方にも参加していただけるように登壇者の発言をすべてリアルタイムで文字起こしし、プロジェクターに投影しました。また、保育ボランティアの配置やキッズスペースを確保することで、お子様連れでも参加しやすい環境設定をしました。

会場にはヨギボーがいっぱい!

今回は、イベントに協賛してくださった株式会社Yogiboさんのご厚意で、いろいろな種類のヨギボーをお借りして会場に設置。ゲストや登壇理事の皆さんにもヨギボーに座ってお話しいただきました!

楽しさや嬉しさ以外の気持ちも受け止めて

1人目のゲストである森村美和子さんからは、「子どものウェルビーイング」をテーマにお話いただきました。聞き手は、School Voice Project 理事の若杉逸平さんと久保敬さんです。

「多様な子どもがいることを前提として、学校づくりをしているでしょうか?」ゲストの森村さんからは、そんな問いが投げかけられました。公立小学校の特別支援学級の担任を勤めてきた森村さんは、子どもたちとの関わりから“当事者の視点に立ち返ること”の大切さを感じるようになったと言います。

コミュニケーションは、人と人の間にあるものなんですよね。上手くコミュニケーションが取れないときに、一方だけの責任にするのではなく、安心してヘルプが出せる環境や関係性があるといいですよね。それを考えていくことは、ウェルビーイングにも繋がっていくことだと思います(森村)

森村さんが実践したのは、子ども自身が自分の困っていることを研究し、対処方法を考えて発表する「自分研究」。イベントでは、さまざまな子どもの自分研究の成果を紹介していただきました。「自分研究」に決まったやり方はなく、キャラクターを作ったり漫画を作ったりと、それぞれが好きな方法で自分の困っていることを表現します。

いろんなお子さんと関わる中で、『不安があっても、それを自分の一部として向き合っていく方が楽なんだよ』と教えてもらいました。教員としての私は、真逆のことをしてしまっていないだろうかと考えさせられました。皆さんは、子どもの嬉しさや楽しさ以外の気持ちも、受け止めているでしょうか?(森村)

続けて、大人のウェルビーイングの大切さについてもお話しいただきました。

ある子どもが、私に手作りのカードをくれました。そこには『疲れは頑張りの証』と書いてあったんです。皆さん、疲れていませんか?私たち大人も、疲れている自分をもっと抱きしめてあげていいのではないかなと思います。

そして別のカードには、『誰でも世界は変えられる』と書いてありました。そのための一歩がきっとこういう場でのつながりなんだと思っています。人にはそれぞれいろんな得意や強みがあります。手を取り合って、一緒にとことん悩む。そんなことから、世界は変えられるのではないかな。そんな希望を持っています(森村)

森村さんのお話をじっくりと聞いてからは、若杉逸平さんと久保敬さんも交えて、ウェルビーイングについて考えていきました。

子どもの声を聞くことは大切だけど、その前に大人は自分の声を出せているのだろうか…と考えてしまいました。私はSchool Voice Projectの理事として活動する中で、自分のことを話せている実感があります。そういう関係性は大切にしていきたいなと思います。それと同時に、教員はやっぱりいい仕事だなと感じました。子どもとともに人間として成長していける素敵な仕事だと思います(久保)

大人が“聴く”という行為を丁寧にすることで、子どもは本当に出したいものを出すことができるのではないかなと思います。私は普段ファシリテーターの役割をすることが多く、子どもが安心して声を出せる環境をどうつくるかは意識するようにしています。森村さんの著書『自分研究』も読ませていただきました。さまざまな事例を紹介しつつ、子どもとの関係をどうつくっていくのかについて丁寧に書かれていて、大変参考になりました(若杉)

パネルトークのあとは、参加者同士で感じたことをシェアする時間も設けられました。真剣な表情で語り合うグループもあれば、笑い声が聞こえてくるグループも。

実感を伴う言葉を使って語る

2人目のゲストである石川晋さんからは   「教職員のウェルビーイング」をテーマにお話いただきました。聞き手は、School Voice Project 理事の山本智子さんと加藤陽介さんです。

2016年に発行された写真絵本『わたしたちの「撮る教室」』の紹介から始まりました。

2011年頃から、私の実践はものすごい勢いで変わりました。それから5年間くらいの集大成のような本です。当時担任していた中学3年生の41人がそれぞれカメラを持って、1年間自分たちの教室を撮り続けるんです。プロのカメラマンである小寺卓矢さんに来てもらって、1年かけて教室づくりの実践を記録しました(石川)

絵本からは、自分が感じたことを表現しようとする生徒一人ひとりの姿があることが伝わってきます。丁寧に絵本の中身を紹介した上で、石川さんは参加者にこう投げかけます。

さて、私の教室にあったのはウェルビーイングですかね?

そして、続けます。

この実践をしている当時の私は、ウェルビーイングなんて言葉は知らなかった。ただ、子どもたちが幸せに暮らせればいいなと思っていましたし、子どもたち一人ひとりが自分の特性に合わせて自分のペースでいろんなことができればいいなと思っていただけです。

実践者は今、巧妙に自らの言葉を剥奪されているように思います。私たちは、幸せも喜びも苦しみも悲しみも、自分の実感を伴って使う言葉でしか伝えられないはずです。決して、ウェルビーイングという言葉がダメだと思っているわけではありません。ただ、僕らは実践者だから、自分で自信を持てる言葉を使えばいいと思うんですよ。それが私たちが幸せでいられることに繋がっていくんじゃないかと思います(石川)

パネルトークでは、「大人の幸せ」についてそれぞれがエピソードを交えながら振り返りました。

職員室と教室は地続きだと思っているんです。『子どもたちと過ごすのは幸せだけど、職員室での人間関係はちょっと…』という声も聞きます。職員室でも学級づくりと同じように、みんながそれぞれを思いやったり、思いを打ち明けられたりできたらいいなと思います(山本)

私は公立小学校でいじめ対策担当教員をしています。いつもイレギュラーな対応なので、予定の目処が立たないんです。思い通りにならないことが多いのですが、その中でも楽しさを感じることはあります。担任が対応しきれないところを自分が肩代わりしたり、関わっている子どもの変化を聞いたりすると、自分が役に立っている実感が沸くんですよね(加藤)

最後に、石川さんから、自分の目の前にあることと向き合うことの大切さについてお話してくださいました。

私たちは今、愛が高じて自分のことをちゃんとやっていないと思うんです。いろんなことに手や足を突っ込んでいるんじゃないのかな、と思うわけです。自分の授業をとにかく一生懸命やっていたら、それで日が暮れるはずなんです。誰かを変えようとするのではなくて、自分の持ち場を離れずにやっていれば、それが楽しさにつながるはずなんですよ。

そもそも生まれも育ちも全然違う人たちが集まって職場を形成しているんだから、分かり合えないのは当たり前ですよ。それでもお互いのことを少しでもわかるように近づいてみるのが対話なんだと思います。

お2人のゲストを招いて行ったパネルトークのあとは、参加者同士での対話の時間を設け、イベントを終えました。

参加者の声

フラットな雰囲気づくりのおかげで、現場の先生の思いやお悩みなどをリアルに聞くことができ、自分自身も素直にお話することができました。

今までオンラインでお会いしていた方、全国から集まって来られた方に対面でお会いできて、対話することができて、とてもすてきな時間でした。目の前の子どもたちに自分ができることを丁寧に、子どもたちの目線にたって関わっていこうと改めて思いました。すてきな会をつくってくださって、ありがとうございました!またエンタクでもつながりを続けて、学んでいきたいてす。

学校はそもそも多様な子どもたちがいる、という前提となっているだろうか、という問いは、自分が普段から考えている問題意識とマッチしていました。そして、ここに気づくためには、当事者の視点、子どもたちの視点、気づきをシェアできる大人どうしの仲間が必要だと思った。SVPがそうした大人のつながりづくりの場になっていて、それが育っていけばいいなと思いました。

実際にモヤモヤされている学校現場の方々が、それでもなんとか動こうと集まられている、この状況が貴重な場だなぁと思いました。スピーカーの話は馴染み深く、素直に感じられる話でした。話の背景にあるものや状況から見える課題が、私の関心ごとです。どうやったら、多くの教育現場が「いい感じ!」(私が使うウェルビーイング置き換え)になるでしょうかねぇ。考えつづけようと思います。

まとめ

「ウェルビーイング」をテーマとしたイベントでしたが、ゲストの石川さんからは「自分で自信を持てる言葉を使えばいい」というお言葉がありました。近年耳にするようになったウェルビーイングという言葉によって、心身ともにより良い状態であることに意識が向けられるようになった一方で、どこか実感を伴っていない言葉が一人歩きしてしまう側面もあるかもしれません。大切なのは、より良いと感じる状態を一人ひとりが言語化していくことではないでしょうか。

そして、その言語化の過程には、「聞いてくれる人」の存在が不可欠です。森村さんからは「子どもの嬉しさや楽しさ以外の気持ちも、受け止めているでしょうか?」という問いが投げかけられました。ポジティブな言葉だけではなくネガティブな言葉も、そして言葉にならない思いも、そのままを受け止めてくれる人がいることで、子どもも大人も安心していられる場がつくられていくのだと思います。

今回はウェルビーイングをテーマに、会場となったドルトン東京学園 中等部・高等部の先生方にもご協力いただき、誰もが参加できる仕組みづくりを意識して開催しました。NPO法人School Voice Projectでは、今後もオンラインや日本全国で学校現場をよりよくしていくためのイベントを開催していきます。

教職員をはじめとする、学校教育に関心を持った方が集まるコミュニティ「エンタク」のメンバーの方にはお得な割引もあります。ぜひ参加をご検討ください。


文科省は令和5年度の概算要求の中に、教員がより児童⽣徒への指導や教材研究等に注⼒できる体制を整備するために、スクールサポートスタッフ(教員業務⽀援員,略称:SSS)の配置拡充を盛り込みました。

人手が増えることを歓迎する声も多い一方、現場によっては「活かしきれていない」という声も聞こえてきます。本アンケートでは、SSS活用をめぐる現状について教職員の方に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年10月17日(火)〜2023年12月4日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :65件

アンケート結果

設問1 SSSが勤務校にいたことはある?

Q1. これまでスクールサポートスタッフが勤務校にいたことはありますか?(複数選択可)

勤務している学校にスクールサポートスタッフがいると回答した人は全体の60%でした。一方で、「いない」と回答した人は18%おり、全ての学校にスクールサポートスタッフが勤務しているわけではない現状がわかります。

設問2 SSSはどのような人?

Q2. これまであなたが出会ったスクールサポートスタッフはどのような人でしたか?(複数選択可)

  • SSSはどのような人?(設問回答者数57人)
    • 元保護者・PTA:9人
    • 現役の保護者:2人
    • 学生:4人
    • 元教員:14人
    • 上記以外の地域の方:12人
    • それ以外:16人

教員として学校に勤務した経験がある人や子育て経験のある人のほか、地域の住民など、さまざまな立場の人がスクールサポートスタッフとして勤務していることがわかります。

設問3 SSSが担っている業務は?

Q3-1. これまであなたが出会ったスクールサポートスタッフはどんな業務を担っていましたか?

Q3-2. 上記のほかにスクールサポートスタッフが担っていた業務があれば記入してください(任意)

清掃時間の児童の見守り。
養護教諭不在時の保健室見守り。
ホームページ作成。【小学校・職員】

コロナ禍では、校内の消毒作業を担っていました。【小学校・教員】

教材を頼まれたとおりに作ったり、校外学習のしおり作りなど、学校にきたプリントを数えてクラス分け。【小学校・教員】

教頭の補助業務(アンケート集計、給食に関する作業など)。
来客対応(お茶出し)。【小学校/中学校・職員】

副校長に頼まれた臨時の仕事、
年度末の備品の管理など。【小学校・教員】

前任校では、ICTに詳しい方(PC教室のインストラクター)だったので、データ起こしや、Word、Excel業務、PCを使っての課題や、賞状やプリトン等々の作成なども頼まれていました。また、ICT支援員さんがいない時に、タブレットの不具合調整等もしてくれていました。【小学校・教員】

遠足の引率。
掲示物の制作。
新聞社に記事の投稿。
スクールバスに乗る生徒を乗り場まで引率する。
不在の先生に代わった対応(養護教諭が不在の場合は、怪我や体調不良の子の対応。教員が休みの場合は、自習教室に入って見守りや丸つけ。等)。
図書室関係の仕事(借りる・返却するの作業、新しい本の受け入れ、データ入力、児童別読書冊数の集計、本棚の整理、本の修繕、時期などに合わせて特設棚を作る、図書委員会活動の参加 等)【小学校/中学校・職員】

使えなくなったホワイトボードマーカーの回収とリサイクル。
図書のバーコード貼り。【特別支援学校・教員】

iPadのメンテナンス。【高等学校・教員】

会計業務。【高等学校・教員】

会計文書のチェック。
銀行へ行っての入金、払戻、振り込みなどの業務。【高等学校・教員】

スクールサポートスタッフが担っている業務として最も多かったのは、「学習プリントや配布物等の印刷、配布準備(68%)」でした。次いで、「文書収受や封入作業(51%)」「学校行事の準備及び後片付けの補助(49%)」「校内の環境整備(掃除・修理・緑化美化等)(49%)」が多く、事務作業や環境整備などが多い傾向が見られました。一方で、「保護者への電話かけ(連絡なし欠席や早退の際など)(2%)」や「教室に入りづらい児童・生徒の別室対応(17%)」 「授業中の児童・生徒サポート(20%)」など直接保護者や児童生徒と関わる業務を担っている人は比較的少ないことがわかりました。

設問4 SSSに依頼したい業務は?

Q4-1. 【教員向け】スクールサポートスタッフにどんな業務を依頼したいですか?

Q4-2. 【教員向け】上記のほかにスクールサポートスタッフに依頼したい業務があれば記入してください(任意)

支払いなどお金の管理、学年会計。
押印など成績表に関する単純作業。【小学校・教員】

元教員なら教室の入り込みはありだと思います。でも学校現場に初めて携わるSSSの方は職員室で業務をする方がいいと思います。【小学校・教員】

遠足の引率等、不定期にある行事の引率を頼みたい。旅費が出ないということで、わざわざ専科が工面して引率に付き添っています。【小学校・教員】

プール監視の業務。水泳指導中の陸上監視に当該学年の教師以外の教師が呼ばれている。通常のプールでも学生のアルバイトが監視業務をしているのに、授業の準備がある教師を必要以上に配置する必要がない。【小学校・教員】

昼休み等の見回り、見守り。【中学校・教員】

各種文書作成や校務運営の補助。
外部機関との連絡・調整。【中学校・教員】

教員が勤務時間内に行うには無理があり、教員免許がなくてもできる仕事(職員室や職員トイレ、更衣室等の清掃、ゴミ捨て、印刷室の用紙補充等)をやっていただけるとありがたい。現状、それらの清掃は教員が輪番で行っていたり、有志が早朝勤務で行っている。【中学校・教員】

生徒、保護者をいろいろな人間で対応できるのであれば、生徒にとっても良いのかなと思います。また、部活動をお願いしたいです。高校教員ですが、生徒が悩み事で授業等にでれないことが多数あり、空き時間が生徒対応でなくなります。生徒の人数が多いと対応しきれませんでの、カウンセラーの常駐のような形でお願いしたいです。【高等学校・教員】

スクールサポートスタッフに「ぜひ頼みたい」「できれば頼みたい」業務として多かったのは、「学校行事の準備及び後片付けの補助(90%)」「学習プリントや配布物等の印刷、配布準備(89%)」「文書収受や封入作業(88%)」「校内の環境整備(掃除・修理・緑化美化等)(85%)」「各種データ入力作業(78%)」など事務作業や環境整備に関わる業務でした。

「給食に関する業務補助(81%)」「職員室での電話受けやインターホン対応(80%)」「教室に入りづらい児童・生徒の別室対応(61%)」「授業中の児童・生徒のサポート(57%)」「保護者への電話かけ(連絡なし欠席や早退の際など)(55%)」などの業務は、実際にはスクールサポートスタッフが担っているケースは2割ほどでしたが、「ぜひ頼みたい」「できれば頼みたい」と考えている教職員は回答者の半数以上にのぼりました。

設問5 SSSが教員の業務支援をする上での難しさは?

Q5-1. 【教員向け】スクールサポートスタッフが教員の業務支援をするうえでの難しさについてお聞きします。以下の文章にどの程度同意しますか?

Q5-2. 【教員向け】上記のほかにスクールサポートスタッフが教員の業務支援をするうえでの難しさがあれば記入してください(任意)

SSSのスキルに差がある

何が出来て何ができないのかを周知してほしい。不明確なため、依頼が難しい。【中学校・教員】

各校の配置されている支援員さんの力量、得意不得意がそれぞれ違って、コピーを頼むにも、事細かく指示出して・・・じゃないとできない方、最低限の指示で素晴らしい出来に仕上げてくれる方等々、しばらく様子を見ないわからないところもあり、難しい。【小学校・教員】

以前は、学校に勤務するのが初めての方だったので、採点業務や教材準備などは、説明することが難しく、主に清掃や事務作業のお手伝い中心だった。現在は、退職教員の方(過去に本校勤務)がSSSのため、丸付けや教材準備も、簡単な説明で済むので、お願いしやすい環境になった。ただ、短時間勤務で、給与面でも十分な物ではない事も、気を遣う点の一つになっている。【小学校・教員】

プリント作成(集金のお知らせなど)をお願いした場合、ミスがないかのチェックが必要である。スクールサポートスタッフの方によってはパソコン作業が不得意だったりすると、やり直すこともあり、「結局自分でした方が…」となる。来ていただいているスクールサポートスタッフの方の良さが活かせる仕事にすれば業務改善にもつながるが、その「良さ」が現場が求めているものと違う場合、仕事が頼みにくいこともある。【小学校・教員】

SSSの勤務時間が短い

SSSの勤務時間が午後3時半までなので、頼みたい時にいない。あと週4勤務なので、休みの日には依頼できない。【小学校・教員】

学校に1人で、半日勤務のため、全校の学級がサポートを頼むことができない。せめて、学年部に1人配置してほしいと強く思う。【小学校・教員】

教師の数に対してスクールサポートスタッフの数がとても少ないので労力が非常に限られている。そのため頼める業務も限定的になる。また、勤務時間も児童がいる時間に限られているので、教師が事務作業や授業準備をする時間にはいないため、作業のサポートをしてもらうという事もあてにできない。【小学校・教員】

依頼できる業務が限定されている

副校長によっては、購入したテストの採点を頼んではいけないと言ってきた。【小学校・教員】

授業への入り込み、という形に限定されている(思い込んでいる?)ように思います。【小学校・教員】

神奈川県の高等学校の業務アシスタントは、生徒に関わる業務をやってはいけないことになっている。【高等学校・教員】

依頼する暇がないほど業務量が多い

自分自身(教員)が忙しく、印刷や採点の説明をする時間が惜しくて依頼せずに諦めてしまうことがありました。【小学校・教員】

依頼する時間とエネルギーがない。依頼内容の説明をしている暇もないくらい忙しいから採用しているのだと思う。教員が担うべきでないような仕事は主に定時のあとに行われる。当然スタッフは退勤後。つまり仕事が減らない限り、スタッフの方も気まずい状態で日中居続けることになる。【高等学校・教員】

スクールサポートスタッフも含めて、自分のもっていた仕事を他の人にお願いするとなると、ある程度前もってお願いする必要があると思うが、そもそも忙しくて、明日の準備も間に合っていない、ということも多く、結局お願いできそうなプリント印刷のような仕事も、使う前日の勤務時間後に急いで印刷している、という状況です。そもそもの教職員の人手が増えると、サポートスタッフの方にももっと効率的に働いていただけると思います。【中学校・教員】

業務を依頼することに心理的な抵抗がある

教員は仕事を他の人に振ることになれていない。「こんなこと頼んでいいのか?」と考えてしまう人が多いのでSSSをいかしきれていない。【小学校・教員】

こちらの意図がきちんと伝わるか、汲んでくれるかが不安で、結局自分、または周囲の教員に頼むようにしてしまってる。【中学校・教員】

SSSが業務を遂行するための環境が整っていない

教職員PCが配当されていないと、データの直接印刷を依頼しにくい。【中学校・教員】

まとめ

スクールサポートスタッフが担っている業務は、配布物の印刷や校内の環境整備、給食に関する業務補助や児童・生徒への対応など、多岐に渡ることがわかりました。一方で、「スクールサポートスタッフに依頼したい」と思いつつも、さまざまな理由で依頼することが難しい現状があることも、回答から見えてきました。

特に、依頼していい業務なのかが不明瞭であることから、依頼を躊躇するケースが多いようです。自由記述からは、スクールサポートスタッフのスキルに差があり、「依頼業務について説明することが難しい」「依頼した業務を自分でやり直すこともある」という意見もありました。また、普段の業務量の多さから「依頼する時間とエネルギーがない」という現状もあるようです。

これから全国に広がっていく、スクールサポートスタッフの配置。教員の業務負担を減らすことで、児童生徒の指導や教材研究等に注力できる体制につながることを願います。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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「マルチ知能」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

アメリカの発達心理学者・教育学者のハワード・ガードナーが提唱した、人には<言語的知能><論理・数学的知能><空間的知能><身体・運動的知能><音楽的知能><対人的知能><内省的知能><博物的知能>の8つの知能があるという考え方で、欧米を中心として、世界中の教育現場で広く取り入れられているものです。

これを子どもたちにも捉えやすいように表現したものが、「マルチピザ」です。

日本では、涌井恵さんの研究グループによる「協同学習のユニバーサルデザイン化」に関する研究の中で取り入れられ、ポスターや活用ツールが作成・提案されています。今回は、この涌井さんの授業研究にも参画されていた東京都小学校教員・田中博司さんに、教室での活かし方や効果について、お話を伺いました。

マルチピザのポスター(涌井, 2014)

基本的な活用と考え方

—— マルチピザをどんなふうに使ってきたのですか?
マルチピザは、ぼくが料理人だとしたら、よく使う調味料の1つという感じで、もう10年ほど使っています。

一番よくやるのは、漢字の学習を「ひたすら書いて覚える」という1つの方法じゃなくて、マルチ知能を使っていろんなやり方で覚えよう、というものです。クラスみんなでアイデアを出し合って、その中から自分のやり方を選んでやってみようって。「楽だから」という理由で選んでしまうケースもあるんですが、「自分が選んだ方法が、結果に結びついていなかったら変えていこうね」ということも伝えながらやっていました。漢字を取り上げていたのは、どの学年でも何回もやる学習であって、記憶ベースのものだからです。その点で、学び方を学ばせたいときに、活用しやすいんです。

—— 子どもたちに、どんなふうに説明するのですか?

「アメリカの学者さんが発見したんだけど、人には8つの知能があるらしいよ。あなたはどれが好き?得意?」みたいな言い方で伝えています。「みんな好きなのどれ?」って手を上げてもらって「ほら、結構みんなバラバラだよね」と。「みんな同じじゃないよね」っていうの一番言いたいことなんですよね。

学校教育の中は、同調性が強いですよね。それも大事なんだけど、少し偏りすぎてると感じます。もっと違いに目を向けることが、過ごしやすさにつながるはずだという思いが自分にはあります。それをマルチピザを活用することで伝えていきたいと思っています。

算数教室での実践

今は担任を持っていないので、専科として担当している算数の教室にポスターを貼ってあって、折を見て個別に、紹介しています。1

習熟度別の授業で、算数が苦手な子達が集まる時間があるのですが、そうすると多くの場合、劣等感を持って算数教室にやって来るんです。「自分は勉強がダメなんだ」「俺はバカだから」って。そこでマルチピザ、「そういうことじゃないよ、ここが苦手なだけだよ」「ピースの1つであって、こっちが苦手な人もこっちが苦手な人もいる」ということ伝えると、ちょっと考え方が変わるというか、目つきが変わるというか。そういうことがよくあります。専科の立場だと、それを浅く広くできるので、意外と効果が大きいなと感じています。

上のほうの学年になると、これが苦手だとか嫌いだとかは、ある程度仕方ないと思います。でも、「じゃあ違う攻略方法を使えばいいじゃん、作戦考えようよ」というと目つきが変わる子も出てきます。

例えば、計算はすごく苦手なんだけど、図形は得意な子がいました。円の面積を求めるのに、式までは立つんだけど、計算で絶対間違える。それで、「もう、暗記しちゃえばいいんじゃないか」というアイデアが出たんです。「それいい考えじゃん、どっちがいいかやってみよう」ということで、みんなで半径ごとの面積を書き出して語呂合わせをつくって、それでテストに臨みました。不得手な部分を補う戦略・方略として彼らが関わり合っていることにすごく価値を感じて、こういうのがいいよなぁと思いました。

—— 教師の側にとっては、どんな意味がありますか?
多くの先生は、授業をどう教えるか、ということに関心があるので、先生たちにマルチピザの価値を感じてもらいやすいのは、やはり教科の狙いを達成させるために活かせるよ、ということなのかなと思います。教え方も学び方は1つじゃない。どの子も認知の仕方が違っていて、一人ひとりに合う学習方法がある。だから、いろんな教え方、学ばせ方をしなきゃいけないよね、ということですよね。実際、そういう研修をやったこともあります。

教師にとっての意味

ただ、ぼくとしては学習効果よりも、自分らしさや一人ひとりの違いをベースにした学級づくり・人間関係づくりのためのエッセンスとしての有効性が大きいと感じています。自分に合う学び方を見つけるのももちろん大事なのですが、それに付随して「そもそもみんな違うよね」という前提の、自己理解・他者理解が生じることがとても大きいです。

「ちがって当たり前」を文化に

このあいだワールドカップがあったとき、試合の翌日に「昨日サッカー見た!?」と教室が盛り上がりました。ほとんどの子たちは見ていたんですけど、まったく知らない子が2人だけいたんです。おそらく、本人も家族もあまり興味なくて。そうするとみんな「え?」っていう顔でその子たちを見るんですよね。

「いや、だってほら、そもそもみんな違うんだからさ、見ない人もいて当たり前じゃん」という話をしたのですが、そういう時に壁にマルチピザのポスターが貼ってあったりすると、「ああ、そうだよね」っていう雰囲気になりやすい気がしています。サッカーを見ていなかった子への「え?」っていう空気がやわらぐというか。「学び方だって、好き嫌いだって、みんな違うんだから、サッカー見る人がいたって、見ない人がいたっていいじゃん」って。「ちがって当たり前、ちがっていいよね」というメッセージが、伝わりやすくなる感じがしますね。

子どもたちに学級の良いところを聞くと、いつも「個性がある」というのが上位に上がってくるのですが、マルチピザや、そのほかにも違いを大切にするための取り組みをしているからかなあと感じます。それを、クラスの良さとして子どもたちが捉えてくれているのは、嬉しいし、そうすると支援を必要とする子がいても学級経営が楽になります。

学校という場所はどうしても、自動的に、画一的な方向に引っ張られてしまいます。それはやっぱり「一斉に効率よく教えることで力をつけない」といけないという土台で先生たちも育ってきてるからですよね。そろってないと気持ち悪いと感じたり、またそろってないと立ち行かないというのもあると思うんです。30人を分単位で動かそうとすると揃ってないと連れていけないという。でも、だからこそ、ぼくらがそこに自覚的でいること、意図的にそうじゃない要素を教室に入れていくことがすごく大事だと思ってます。

—— 田中さん、ありがとうございました!

  1. ※このインタビューは2023年1月に行いました。2023年11月現在、田中さんは算数専科ではなく、6年生担任です。 ↩︎